蛍光イメージングフィルターのチュートリアル


蛍光イメージングフィルターのチュートリアル


Please Wait
Click to Enlarge
蛍光顕微鏡を通る光の図

Excitation filter, Emission filter, and dichroic mirror transmission plots
フィルターセットMDF-YFPの透過率グラフ。ダイクロイックミラー(緑色)は励起波長域(青色)内の光を反射し、蛍光波長域(赤色)の光を透過します。

蛍光顕微鏡用のフィルタ

蛍光色素分子
蛍光色素分子は蛍光を生成できる分子または分子の一部です。分子が基底状態から励起状態まで移るのに必要な周波数の光を受けることで、励起が生じます。しかし、分子はいったん励起状態になると不安定になります。短い期間(通常10-15~10-9秒)の後、光子(フォトン)はリリースされ、分子は低い励起状態に戻ります。振動や音、熱エネルギのような多様なメカニズムによるエネルギの損失により、放射光は吸収光より長い波長(低いエネルギ)になります。

単体の蛍光色素分子はフォトブリーチングによる破壊(光励起のケミカルダメージや共有結合修飾による不可逆破壊)がなければ、連続して励起することが可能です。フォトブリーチングの前に特定の蛍光色素分子が受ける励起および発光サイクルの平均的な数は、蛍光色素分子の分子構造と局所的環境により変わります。数個の光子を放出した直後にフォトブリーチングする蛍光色素分子もあれば、ずっと強固でブリーチングする前に何千あるいは何億ものサイクルを経験する蛍光色素分子もあります。

蛍光顕微鏡用のフィルタ
右の実験セットアップは、励起光と蛍光の両方が顕微鏡対物レンズを通過する落射蛍光顕微鏡で使われている一般的なフィルタを示しています。用途に合わせて適切なフィルタとミラーを慎重に選ぶことによって、S/N比は最大化されます。右図のように、不要な放射を最小に抑えながら蛍光信号を最大にするために3種類のフィルタが使われています。各光学素子の解説は、下に掲載されています。

励起フィルタ
励起フィルタは、蛍光色素分子の励起のピーク波長近傍の狭い波長範囲しか透過しません。例えば右のグラフのように、YFP励起フィルタ(MF497-16)の90%を超える透過率に対応するバンドパス領域は489~505 nmです。この範囲外の入射は一部(透過領域に近い領域で)または全部(バンドパス領域から離れた領域で)がフィルタによって阻止されます。

ダイクロイックミラー
ダイクロイックミラーは、特定の波長(カットオフ波長)よりも短い波長の光を反射しますが、それ以外の波長はすべてそのまま通過するよう設計されています。顕微鏡では、ダイクロイックミラーによって適切な波長が試料および像面に向けられます。 各ミラーに対応したカットオフ波長の値は透過の50%に対応する波長を示しています。例えば、右図に示されているように、YFPダイクロイックミラー(MD515)の透過波長は約515 nmとなります。 

ダイクロイックミラー1枚を実験セットアップで入射に対して45°に配置することにより、励起光(上図内に青色で表示)はダイクロイックミラーの表面から反射され、試料と顕微鏡対物レンズへと向かいます。一方、試料から発する蛍光(上図内に赤色で表示)はミラーを透過して検出システムへと向かいます。

ダイクロイックミラーは蛍光顕微鏡で重要な役割を果たしますが、不要な光を遮断することとなると完璧とは言えません。一般に、ダイクロイックミラーにより、カットオフ波長より短い波長の光の約90%は反射され、これより長い波長の光の約90%は透過されます。そのため、試料によって放射される(励起光より)長波長の蛍光と一緒に、励起光の一部もダイクロイックミラーを透過してしまいます。この不要な光が検出システムに届くのを防ぐために、ダイクロイックフィルタの他に吸収フィルタが使われます。

吸収フィルタ
吸収フィルタは不要な励起光を遮断しながら試料からの蛍光をディテクタに届ける役割を果たします。励起フィルタ同様に、このフィルタは蛍光色素分子の発光のピーク波長近傍の狭い帯域幅しか透過しません。例えば、右のグラフのように、YFP吸収フィルタ(MF535-22)の90%を超える透過率に対応するバンドパス領域は524~546 nmです。この範囲外の入射は一部(透過領域に近い領域で)または全部(バンドパス領域から離れた領域で)がフィルタによって阻止されます。


Posted Comments:
No Comments Posted