ホログラフィック回折格子分光器


  • Volume Phase Holographic Transmission Grating Design
  • Up to 130 kHz Scan Rate
  • External Trigger Input
  • Wavelength Calibrated and Amplitude Corrected

HG10

Cables, Power Supply,
and Software Included

Spectrometer Software Included

Easy-to-Use Software Package with ThorSpectra GUI

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HG10 Spectrometer Setup
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分光器HG10の動作図

特長

  • 波長範囲:810~965 nm
  • 透過型の体積位相ホログラフィック回折格子(VPHグレーティング)を内蔵
  • 回折限界スポットサイズ(シングルモードファイバ入力による回折限界)
  • High-Speed USB 3.0接続により、最高走査速度130,000/秒を実現
  • 外部同期用のトリガ入力(TTL)
  • 2048ピクセルのラインスキャンセンサ
  • 波長校正済み(校正報告書が付属)
  • 信号強度は補正済み(ピクセルごとの強度に基づいた相対補正)
  • シングルモードファイバーパッチケーブルが付属
  • 中心波長とカメラ速度はカスタマイズ可能(詳細は当社までお問い合わせください)

ホログラフィック回折格子分光器HG10はファイバを使用した高速分光器で、810~965 nmの波長範囲においてナノメートル以下の分解能が得られます。最高130 kHzのデータ収集速度、TTLトリガ入力による外部同期オプションといった特長を有し、また堅牢に設計されているため、スペクトルを安定に素早く取得できます。この分光器はGanymede™シリーズの光コヒーレンストモグラフィ(OCT)イメージングシステムで使用されている分光器をベースにしており、実験セットアップに簡単に組み込むことができます。

このデバイスは回折光学素子を使用した分光器です。入射光は、体積位相ホログラフィック回折格子(VPHグレーティング)の性能を最適化するようにコリメートされ、回折格子に入射する光の波面が確実にフラットになるように設定されています。回折格子の出射角は波長に依存するため、カメラ上にはスペクトルの空間的分布が生成されます(右図参照)。

各分光器には、USBフラッシュドライブ、外部トリガ信号用アダプターケーブル、High-Speed USB 3.0ケーブル、FC/APCコネクタ付きシングルモードファイバーパッチケーブルP3-780A-FC-2 が付属します。このユニットは、出荷する前に、波長校正と付属のパッチケーブルを用いた信号強度補正を行っています。付属のUSBフラッシュドライブには、ソフトウェアパッケージ、校正報告書、校正証明書が入っています。当社では、幅広い種類の光ファイバのパッチケーブルとバンドルを別売りでご用意しています。ファイバーパッチケーブルを変更すると、校正が無効になりますのでご注意ください。パッチケーブルの交換が必要な場合は、新しいケーブルを使用して再校正することをお勧めします。別のパッチケーブルを使用して分光器を校正したい場合は、当社までお問合せください。

性能データは下記の型番横の赤いアイコン() をクリックし、「Download Serial Item Data」にデバイスのシリアル番号を入力することでダウンロードできます。

取付けオプション
簡単かつ安定に取り付けられるように、分光器HG10にはベースプレートが付いています。ベースプレートにはスロットが3つあり、M6タップ穴の付いた標準的なミリ規格のブレッドボードや光学テーブルに取り付けられます。分光器を単体のデバイスとして使用する場合は、付属の4つの粘着性ゴム足をベースプレート底面の窪みに取り付けてご使用いただくことができます。詳細は「セットアップ」タブをご覧ください。

ソフトウェア
付属のソフトウェアには、感度と分解能を調整するためのコントローラ、狭帯域光源用の波長計ツール、広帯域光源用のコヒーレンス長測定ツールなど、複雑な解析を簡単に行えるツールが含まれています。また、スペクトルを測定するための光路長が有限であることを補償するために使用されるアポダイゼーション関数も利用できます。ThorSpectra GUIを使用して、取得中のスペクトルを観察することができます。生データは、そのままエクスポートすることも、あるいは波長校正、波長を等間隔にしたグリッドへの内挿、相対振幅補正などの処理を選択/適用してエクスポートすることもできます。ソフトウェアの機能についての詳細は、「ソフトウェア」タブをご覧ください。

分光器のカスタマイズ
分光器の検出波長領域は500~1000 nmの間でカスタマイズ可能です。カメラの速度についても、USBまたはCameraLinkインターフェイスを使用して20~250 kHzの間でカスタマイズ可能です。カメラの速度、カメラインターフェイス、分解能、光ファイバなどについて、さらにカスタマイズを希望される場合は、当社までお問い合せください。

再校正サービス
分光器HG10の再校正サービスを行っています。詳細は当社までお問い合わせください。正確な測定を行うために、12か月ごとの再校正をお勧めしています。

HG10 Spectrometer Drawing
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分光器HG10の概略図
Specifications
Optical
Detection Range (Typical)810 - 965 nm
(12 346 - 10 363 cm-1)
Spectral Resolution (FWHM)0.25 nma
(3.16 cm-1)
Spectral Accuracy±0.15 nma
(±1.9 cm-1)
Pixel Resolutionb0.08 nm
Wavelength Precision±0.1 nm
Signal-to-Noise Ratio40 dB
OCT A-Scan Resolution (FWHM)c5.0 µm
OCT Imaging Depth2.5 mm
Stray Lightd< 0.1%
Included Patch Cable
Patch Cable Item #P3-780A-FC-2e
Fiber Item #780HP
ConnectorFC/APC, 2.0 mm Narrow Key
Numerical Aperture0.13
Grating
Item #GP3512N
TypeVolume Phase Holographic Transmission
Line Density1200 Lines/mm
Design Wavelength930 nm
InfoClick for Details
Camera
Sensor TypeSilicon
Sensor Range400 - 1100 nm
InterfaceUSB 3.0
Maximum Speed130 kHz
Minimum Speed1.5 kHz
Integration Time (Maximum)654.6 µs
Acquisition Period (Maximum)655.35 µs
Pixels/Line2048
Pixel Size10 µm x 200 µm
Dynamic Range69 dB
Analog-to-Digital Conversion (ADC) Resolution130 kHz @ 10 Bit
< 120 kHz @ 12 Bit
Readout Noise55 e-
Full Well Capacity (Typical)140 ke-
Quantum Efficiency Coefficient54%
External Trigger
Maximum Frequency130 kHz
Input InterfaceBNC
SignalTTL
Input Voltage0 - 5 V
General
Interface to PCUSB 3.0
Dimensions (L x W x H), Without Cable and Fiber237.0 mm x 174.7 mm x 98.5 mm
(9.33" x 6.88" x 3.88")
Weight (Spectrometer Only)2.9 kg
Ambient Operating Temperature10 °C to 35 °C (Non-Condensing)
  • 検出波長域内におけるアルゴンのスペクトルの測定結果から決定しています。nmで表された数値は全検出波長域で仕様値として適用できますが、cm-1で表された数値は890 nmにおいてのみ有効です。
  • 計算値(帯域幅/ピクセル総数)
  • すべての検出波長域を使用した場合
  • ブロック波長域で光学濃度4のバンドパスフィルタを使用して定量化。迷光は、フィルタのブロック波長域内の光を、フィルタを設置したときと設置しなかったときとで測定し、それらを比較して計算しました。
  • ファイバーパッチケーブルを交換した場合、分光器の再校正が必要になります。再校正サービスについては当社までお問い合わせください。

取付け方

簡単かつ安定に取り付けられるように、分光器HG10にはベースプレートが付いています。ベースプレートにはスロットが3つあり、M6タップ穴の付いた標準的なミリ規格のブレッドボードや光学テーブルに取り付けられます。最良の安定性を得るには、複数のスロットを使用してデバイスを固定してください。分光器を単体のデバイスとして使用する場合は、付属の4つの粘着性ゴム足をベースプレート底面の窪みに取り付けてご使用いただくことができます。

Mount on Breadboard with Back Slot
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ブレッドボードへの取付け方法、ステップ1:上のMB3045/Mのようなブレッドボードに、ユニットの背面側にあるスロットを利用して取り付けます。

Mount on Breadboard with Side Slots
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ブレッドボードへの取付け方法、ステップ2:ユニットの側面側にある1つまたはそれ以上のスロットを使用してブレッドボードに固定します。
Mount Rubber Feet
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単体で使用する場合:粘着性ゴム足を分光器の底面に取り付けます。

分光器の接続

分光器の詳しい接続方法については各デバイスに付属するマニュアル(各型番横の赤いアイコンをクリックしてダウンロードも可能)に記載されています。

Connect FC/APC Fiber
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ステップ1:付属のFC/APCファイバを分光器に接続します。
Connecting USB, Power Supply, and Optical Fiber
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ステップ2:電源に接続し、カメラのLEDが緑色になるまで待ちます。LEDが緑色になったら、USB 3.0ケーブルで分光器とPCを接続します。
Connect Optional Trigger Adapter
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ステップ3:必要であれば、トリガーアダプターケーブルを使用して、外部トリガ信号の入力やカメラの内部トリガ信号の読み出しを行います。

HG10には以下の製品が含まれます。

  • ホログラフィック回折格子分光器
  • 電源と電源ケーブル(日本国内用)
  • トリガーケーブル用アダプタ(長さ20 cm)
  • ストレートBNCアダプタ(型番T3283)
  • FC/APCコネクタ付きシングルモード光ファイバ(長さ2 m、型番P3-780A-FC-2)
  • USB 3.0、A型/MicroB型ケーブル(長さ2 m)
  • USBフラッシュドライブ
  • ゴム足、4本
  • クイックスタートガイド

ソフトウェア

バージョン1.0.2.28

分光器HG10を操作するためのソフトウェアパッケージには、ThorSpectra GUI、ドライバ、およびサードパーティでソフトウェアを開発するためのSDKが含まれています。

Software Download
TC300 Software
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ソフトウェアのGUI

分光器HG10用のソフトウェア

  • 10台までのデバイスを同時に操作
  • 対応デバイスを自動検出
  • フィルタの種類: ピーク検出、平滑化、平均化、画像の反転/復元
  • アルゴリズム: ガウス変換、吸光度、透過率および相対差の測定
  • Y軸の規格化
  • パーシスタンス(重ね書き)のオプション
  • ユーザによる波長校正
  • オプションの信号強度補正
  • 色・形状の選択
  • データの保存・読み出し(.spf2または.csv)
  • クリップボードへのコピー機能
  • ウィンドウ印刷機能
  • タブ付きウィンドウまたはフローティングウィンドウ
  • 多項式またはガウス関数によるデータフィッティング
  • 調整可能なパラメータ
    • 積算時間
    • トリガーモード: 内部、外部、連続、シングルショット
    • 平均化の方法: 移動平均またはブロック平均
    • 平滑化の方法: ブロック平滑化
    • 画像の反転と復元
    • 表示モード: nmまたはピクセル

HG用ソフトウェアパッケージは研究や製造用として設計されており、使いやすいThorSpectraグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)が付属しています。このGUIを使用すると、複数のデータセットを1つのグラフ内に表示して互いに比較したり、バックグラウンドのデータと比較したりすることができます。平滑化および平均化のアルゴリズムを用いれば、スペクトルの特徴を強調することができます。さらに、このソフトウェアは最大10台のデバイスを同時に制御して、そのデータを1つのグラフに表示することもできます。

右側のスクリーンショットは、分光器HG10で取得した校正用ランプのスペクトルのピークを示しています。これらのピークは、校正用ランプから出射される特定の波長を示しています。

また、当社ではC++、C#、MATLAB、Python、 LabVIEW用のドライバもご用意しております。ソフトウェアパッケージは2017以降のバージョンのLabVIEWをサポートしています。旧バージョンのLabViewのコードは、新しい形式に変換する必要があります。変換についてのご質問等がございましたら、当社までお問合せください。

データ処理
このソフトウェアを使用して、保存されたデータを読み込んで比較することができます。吸光度、透過率、相対差を計算して表示できます。

ソフトウェア開発キット(SDK)
HGソフトウェアは、その柔軟性を高めるために、ソフトウェア開発キット(SDK)を使ってカスタマイズできるようになっています。このライブラリは、多数のプログラミング環境(C、C++、C#、MATLAB、Python、LabVIEW)で使用できます。それらを用いて、ユーザはHGシステムを直接制御したり、カスタマイズされたデータ取得ルーチンを実装したり、またスペクトル処理機能を実行したりできます。SDKについての詳細はマニュアルをご覧ください。

HG分光器の使用と組込みを容易にするために、すべてのSDKにはさまざまな用途に対応するコード例が含まれています。サンプルプログラムにはステップごとにコメントが付けられており、それらはユーザがアプリケーションの開発を開始するときには大変有用です。初期化、ロギング、エラー処理などの基本的な機能に加えて、次のような方法も例として示されています。

  • デバイスのパラメータ変更
  • ユーザが設定した数のスペクトル生データを取得して処理
  • 連続的なデータの取得と処理
  • 特定のライン速度または露光時間でのデータ取得
  • コールバック関数を使用したデータの取得
  • 1つのファイルまたは一連のファイルへのデータの直接書き込み
  • 外部トリガの使用

詳細は当社までお問い合わせください。

回折格子のチュートリアル

はじめに

回折格子は、透過型、反射型のどちらも回折格子内の繰り返し構造により異なる波長の光を分離します。この構造により、入射光の振幅、位相のいずれか、または両方が変化し、出射光に干渉縞が生じます。透過型の場合、細いスリットが狭い間隔で多数配置されていることにより繰り返し構造が実現されています。このマルチスリットにおける放射照度を波長と位置の関数として解くと、= 0°のときの全ての回折格子に当てはまる次のような一般式が得られます。

Grating Equation 1

(1)

この式は回折格子の式として知られています。この式では、間隔aの回折格子により、λに依存した離散的な角度(theta sub m)で光を偏向する様子を表しています。ここでは回折次数です。回折角theta sub m は、回折格子の表面垂線から測定した出射光の出射角です。(1)の式から、次数mが与えられると、異なる波長の光は異なる角度で回折格子を出ることが分かります。これは白色光源の場合は、波長特性が角度依存を持つ連続スペクトルとして表されることを示しています。

Transmission Grating
図1.透過型回折格子

透過型回折格子

一般的な回折格子の1つに透過型回折格子があります。図1で示しているこの表面に溝のある回折格子は、透明な基板に狭い幅の溝を一定距離離して繰り返しスクラッチまたはエッチングすることによって作られます。aこの構造により、光が散乱する領域ができます。

入射光は表面垂線からtheta sub iの角度で回折格子に入射します。次数mが大きくなると、出力角度(表面垂線からのtheta sub m角度)も大きくなります。入射角0°の場合の一般的な回折格子の式(1)を、幾何学的条件を考慮して変形すると、透過型回折格子の式は以下のようになります。

Grating Equation 2

(2)

ここで図1のように回折格子の表面垂線を基準として入射光と回折光の角度が反対側となるとき、は正(+)とします。この場合、格子垂線に対して同じ側であれば は負となります。

 
Reflective Grating
図2.反射型回折格子

反射型回折格子

一般的な回折格子として、ほかに反射型回折格子があります。反射型回折格子は、一般的に、表面に平行な溝を刻んだ光学素子に金属コーティングを施して作製します。反射型回折格子は、マスタをエポキシやプラスチックにインプリントする方法でも作製可能です。いずれの場合でも、光は異なる次数ならびに波長に応じて異なる角度で刻線面から反射されます。反射型回折格子の例が図2に示されています。透過型と同様の幾何学配置として設定すれば、反射型回折格子の方程式は以下のようになります。

Grating Equation 3

(3)

ここで、図2のように入射光ならびに回折光が回折格子の表面垂線に対して互いに反対側にあればは正、は負とします。回折格子の垂線に対して互いに同じ側であれば、角度は両方とも正です。

反射型も透過型も0次光の場合には回折パターンがないため、通常の表面反射、または透過のように見えます。theta sub i = theta sub mとして(2)の式を解くと、得られる解はm=0のみで、波長や格子の間隔に依存しないことが分かります。この条件では波長に依存した情報が得らません。

この問題は、特殊な表面反射形状を有する繰り返し表面パターンを作製することによって解決することができます。このタイプの回折格子は通常ブレーズド(または刻線)回折格子と呼ばれています。詳細については下記をご覧ください。

ブレーズド(刻線)回折格子

Blazed Grating
図4.ブレーズド回折格子、0次光の反射
Blazed Grating
図3.ブレーズド回折格子の形状

ブレーズド回折格子は、刻線回折格子の名でも知られていますが、特殊な形状をした反射型または透過型の回折格子で、特定の回折次数において最大の回折効率を発揮するように設計されています。つまり、光量のほとんどが設計した回折次数に収まり、他の次数(特に0次)への光量の配分による損失が最小限に留められます。この設計により、ブレーズド回折格子はブレーズ波長と呼ばれる特定の波長で動作します。

ブレーズ波長はブレーズド回折格子を決定づける3つの特性のうちの1つです。他の2つは図3に示している溝またはファセット(facet)の間隔a、そしてブレーズ角gammaです。ブレーズ角gammaは、右図に示すように回折格子に平行な面と表面構造の間の角度です。これはまた表面垂線とファセット垂線の間の角度でもあります。

ブレーズド回折格子は、これまで説明してきた透過型ならびに反射型回折格子と形状が似ています。入射角()と次の反射角()は、回折格子の表面垂線を基準として決定されます。大きな違いは、鏡面反射が回折格子の表面垂線ではなく、ブレーズ角gammaに依存するということです。つまり、回折格子のブレーズ角を変更するだけで回折効率が変えられます。

ブレーズド回折格子を使用した場合の0次光の反射を図4に示しています。 m = 0ではtheta sub iの角度で入射した光はtheta sub mで反射します。(3)の式により、得られる解はtheta sub i = –theta sub mのみです。これは平面における鏡面反射と似ています

Blazed Grating
図6.ブレーズド回折格子、格子表面に垂直に入射した光
Blazed Grating
図5.ブレーズド回折格子、ファセットによる鏡面反射

図5に示すように、ブレーズド回折格子における鏡面反射はその表面構造により、平面における鏡面反射とは異なります。ブレーズド回折格子での鏡面反射theta sub rは、ブレーズ角に依存します。反射角が回折格子表面垂線に対してtheta sub iと同じ側にある場合、この角度は負として定義されます。簡単な幾何学的計算により下記(4)式が導かれます。

Grating Equation 2

(4)

図6はtheta sub i= 0°、すなわちビームが回折格子表面に垂直に入射した場合を示しています。この場合、0次反射光も0°の方向を向いています。(3)と(4)の式により、下記(5)式のようにブレーズ角の2倍の回折格子の方程式を得ます。

Grating Equation 2

(5)

反射型回折格子のリトロウ構成

リトロウ構成とはブレーズド回折格子における特定の配置を意味し、モノクロメータや分光計で重要な役割を果たします。この時、は回折効率が最大となる角度になります。この構成では光の入射角と回折の角度が同じtheta sub i = theta sub mであり、m > 0のため、下記(6)式が得られます。

Grating Equation 2

(6)

Blazed Grating
図7.リトロウ構成

リトロウ角度Theta sub Lは、最大の光強度の次数(m = 1)、設計波長lambda sub Dならびに格子の間隔aによって決まります。リトロウ角度Theta sub Lは設計波長においてブレーズ角度gammaと同じであることは簡単に示されます。当社のブレーズド回折格子のリトロウ/ブレーズ角はすべて回折格子の仕様表に記載されています。

Grating Equation 2

(7)

垂直に入射した光に対する回折次数が大きくなるにつれ、波長に依存する角度間隔も大きくなることが分かります(theta sub i= 0°の場合、theta sub mmが増加すると増加します)。高次回折パターンの使用は、次数が低い回折パターンと比べて不利な点が2点あります。(1)次数が高くなると回折効率が減少すること、そして(2)以下で定義されるフリースペクトルレンジFree Spectral Range が狭くなることです。

Grating Equation 2

(8)

 

ここでlambdaは中心波長、mは次数です。

高次回折パターンにおける1つ目の問題点は、大きいブレーズ角と比較的低い溝密度で構成された特殊な刻線回折格子であるエシェル回折格子を使用することで解決します。大きいブレーズ角は、高次回折にエネルギを集めるのに適しています。2つ目の問題点は、回折格子、分散プリズム、あるいは他の分散光学素子など、別の光学素子を使用して、エシェル回折格子を通った後に波長/次数を分離することで解決できます。

Holographic Gratings
図8.体積位相ホログラフィック回折格子

透過型体積位相ホログラフィック回折格子(VPHグレーティング)

従来の回折格子とは異なり、体積位相ホログラフィック回折格子(VPHグレーティング)の表面には溝がついていません。体積型位相ホログラフィック回折格子は、2つのガラス基板の間に重クロム酸ゼラチン(DCG)フィルムが入っている構成となっております。VPHグレーティングは、ブレーズド回折格子で生じる周期エラーを低減するために設計されています。表面の溝密度の高い回折格子では偏光依存損失の問題もあります。こちらのユニークな透過型1次回折格子は、高い回折効率のピーク、低い偏光依存性損失、広い帯域幅での均一な性能といった特性を有します。

回折格子パターンは、一定の距離間隔のラインの繰り返しaで構成されています。透過型回折格子の干渉パターンは図8に示すようにプレートの平面に対して垂直なため、あらゆる周波数の光がプレートを通ることができます。回折は入射光がDCGフィルムを通るときに起こります。そのために性能を決定する3つの要素は、フィルムの厚さ、バルクの屈折率(ブラグ面間の平均屈折率)、変調指数(ブラグ面間の屈折率の差)です。入射光は表面垂線から測定された角度theta sub iで回折格子に入射します。次数mが大きくなると、出力角度(表面垂線からのtheta sub m角度)も大きくなります。上述の回折格子の式は、体積型位相ホログラフィック回折格子では回折角を算出するのに用いることができます。なぜなら分散がライン密度に依存するからです。回折格子の品質は干渉縞のコントラストによって決定します。コントラストが弱いということは、回折効率が低いか、全く回折格子が形成されていないことを意味します。

DCGフィルムは、複数の品質管理工程を経て基準の性能を満たすことを確認後、適切なサイズに切断されています。フィルムは2つのガラスカバーの間に封止され、材質の品質が下がることを防いでいます。DCGフィルムが2枚のガラス基板に入っているため、VPHグレーティングは耐性が高く、寿命が長いうえに、容易に損傷を受けやすい回折格子と比較してメンテナンスしやすい製品となっております。

Holographic Gratings
図9.ホログラフィック回折格子

ホログラフィック表面回折格子

ブレーズド回折格子は設計波長において高い回折効率を発揮しますが、ゴーストなどの周期エラーの発生や比較的大きな散乱光量により、高感度測定に悪影響を及ぼすことがあります。ホログラフィック回折格子はこのようなエラーを低減または取り除くために設計されています。しかし、ホログラフィック回折格子は、ブレーズド回折格子と比べて回折効率が低いという欠点があります。

ホログラフィック回折格子は、マスタを用いて刻線回折格子と同様のプロセスにより作成されます。マスタのホログラフィック回折格子は通常、感光性材料に2本のレーザービームを干渉させて露光することによって作られます。干渉パターンを周期パターンとして表面に露光し、その後物理的または化学的に処理を行い、正弦波形状のパターンを形成します。ホログラフィック回折格子の例は図9に示しております。

なお、分散は1 mmあたりの溝の数のみで決まり、溝の形状には影響されません。よって、ホログラフィック回折格子も刻線ブレーズド回折格子と同じ回折格子の方程式が使用可能です。


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ホログラフィック回折格子分光器

  • 動作波長範囲: 810~965 nm
  • 幅2.0 mmのナローキー付きFC/APCコネクタ
  • スペクトルの最高取得速度は130 kHz

当社のホログラフィック回折格子分光器はファイバを使用した高速分光器で、ナノメートル以下の分解能が得られます。各分光器の波長は校正されており、また信号強度についても付属のパッチケーブルを使用してピクセルごとの強度に対する相対補正がなされています。校正報告書は、各ユニットに付属しているUSBスティックに納められています。分光器に別のパッチケーブルを使用する場合は、システム(分光器と新しいパッチケーブル)として再校正する必要があります。

分光器HG10の再校正サービスを行っています。詳細は当社までお問い合わせください。

+1 数量 資料 型番 - ユニバーサル規格 定価(税抜) 出荷予定日
HG10 Support Documentation
HG10ホログラフィック回折格子分光器、810~965 nm
¥2,787,813
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Recalibration Service for Holographic Grating Spectrometer

Thorlabs offers a recalibration service for our HG10 Holographic Grating Spectrometer. To ensure accurate measurements, we recommend recalibrating the spectrometer every 12 months. When sending the part for recalibration, please include the patch cable that the spectrometer will be used with.

Requesting a Calibration
Thorlabs provides two options for requesting a calibration:

  1. Complete the Returns Material Authorization (RMA) form. When completing the RMA form, please enter your name, contact information, the Part #, and the Serial # of the spectrometer being returned for calibration; in the Reason for Return field, select "I would like an item to be calibrated." If you wish to calibrate your spectrometer with a different patch cable than the one that came with the unit, please list the patch cable Item # in the Further Details field. All other fields are optional. Once the form has been submitted, a member of our RMA team will reach out to provide an RMA Number, return instructions, and to verify billing and payment information.
  2. Enter the Part # and Serial # of the item that requires recalibration below and then Add to Cart. A member of our RMA team will reach out to coordinate the return of the item(s) for calibration. Should you have other items in your cart, note that the calibration request will be split off from your order for RMA processing.

Please Note: To ensure your item being returned for calibration is routed appropriately once it arrives at our facility, please do not ship it prior to being provided an RMA Number and return instructions by a member of our team.

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CAL-HG Support Documentation
CAL-HGRecalibration Service for Holographic Grating Spectrometer
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