偏波保持ファイバーでは一部の入射偏光状態のみを維持


偏波保持ファイバーでは一部の入射偏光状態のみを維持


Please Wait

偏波保持ファイバはすべての入射偏光状態を維持するか

 

 

偏波保持(PM)ファイバは、ファイバの2つの直交軸のうちの1つに対して平行に偏光する直線偏光しか維持しません。偏波保持ファイバで直線偏光の方向が重要なのは、偏波保持ファイバの2つの直交軸の屈折率が異なるからです。屈折率が高い方向(スロー軸)に沿って偏光する光は、直交方向(ファスト軸)に沿って偏光する光よりも遅く進みます。

直線偏光として入射した光線が、これらの2つの軸のいずれかに平行な偏光でない場合、ファイバから出射する光は楕円偏光します。しかし楕円偏光状態はファイバ長に渡る温度と応力の変化に依存するため、予測ができず、かつ安定しません。

Poincare sphere showing polarimeter measurements out of a PM fiber.
Click to Enlarge

図1:偏波保持ファイバーパッチケーブルの出射光を偏光計によりポアンカレ球表示。矢印で示されている点は、直線偏光とファイバ軸の1つが適切にアラインメントされている結果です。これらの入射状態はファイバによって維持されています。その他の点は楕円偏光状態を示し、入射偏光方向がファイバ軸の1つに平行ではないときの結果です。

偏波保持ファイバは光を偏光しない
偏波保持ファイバは直線偏光子のように作用せず、任意の入射偏光状態を直線偏光状態に変換する機能は有しておりません。

直線偏光子には2つの直交軸が規定されていますが、これらは偏波保持ファイバのスロー軸とファスト軸に相当するものではありません。直線偏光子の場合、軸の1つに対して平行に偏光する光は減衰し、もう1つの軸に対して平行に偏光する光が透過します。1つの偏光成分のみが透過するので、出射光は直線偏光となります。

偏波保持ファイバは直交する偏光成分のどちらも透過させ、どちらかを減衰させることはないため、直線偏光子としてはご使用いただけません。

波長板との比較
偏波保持ファイバと波長板にはどちらもファスト軸とスロー軸があるなど、多くの共通点があります。直線偏光の偏光軸がスロー軸またはファスト軸のどちらかに平行であるとき、偏波保持ファイバと波長板のどちらもその偏光状態を維持します。しかし、入射ビームにスロー軸とファスト軸の両方に沿って偏光する成分がある場合、偏波保持ファイバと波長板のどちらもその入射偏光状態を維持しません。

偏波保持ファイバと波長板は、スロー軸に平行な偏光成分をファスト軸に平行な偏光成分より遅らせることで、光の偏光状態を変化させます。しかし、偏波保持ファイバはファイバにかかる温度や応力の変化によりこの遅延が変動するため、波長板の代わりに使用することはできません。

出射偏光状態
図1でポアンカレ球上に表示されている偏光計の測定結果は、偏波保持ファイバーパッチケーブルがもたらす様々な楕円偏光状態を示しています。これは直線偏光がファイバ軸に対して任意の方向に入射されているときに起こります。ファイバによりが入射偏光状態が維持されているとき、出射光の偏光計測定結果は、黒い矢印で示している2つの値の内の1つとなります。これらの値は、入射偏光状態の偏光方向とファイバ軸の1つの間のアライメントが適切である結果です。その他の点はすべて楕円偏光状態を示しており、これは入射偏光状態がどちらのファイバ軸に対しても平行ではないときに起こります。

図のデータの軌跡は、直線偏光の偏光方向を光軸の周りで1回転させて生成しました。軌跡がオーバーラップしないのは、ファイバの温度が毎回、回転後に変化したからです。ファイバの温度の感度により、温度が変化する度に異なる楕円偏光状態を得ます。なお、各軌跡が黒矢印の点を通過することをご確認ください。これは入射時の直線偏光状態がファイバ軸の1つによくアライメントされているとき、出射時の偏光状態が温度や応力の変化に依存しないことを示しています。

「Insights-ヒント集」は下記リンクからご覧いただけます。  
一覧を見る

終更新日:2020年8月6日


Posted Comments:
No Comments Posted