楕円ミラー
- Circular Aperture at 45°
- 1/2", 1", or 2" Effective Diameter
- Metallic or Broadband Dielectric Coating
PFE20-M01
2", Protected Gold
BBE05-E03
1/2", E03 Broadband
Dielectric
PFE10-P01
1", Protected Silver
Application Idea
Elliptical Mirror in
Right-Angle Mount
Please Wait
注: 下図に示されている、ミラーの有効領域は楕円の短軸径の範囲となります。光軸から45°の角度から見た素子の外形が有効範囲です。
特長
- 円形12.7 mm(1/2インチ)、25.4 mm(1インチ)、50.8 mm(2インチ)、開口45°
- 金属または広帯域誘電体コーティング
- 広帯域誘電体:400~750 nm(-E02)または750~1100 nm(-E03)コーティング
- 金属コーティング:保護膜付きアルミニウム、保護膜付き銀、超短パルス用銀、保護膜付き金
- 平面ミラー、基板はUV溶融石英(UVFS)または溶融石英
当社の楕円ミラーは、楕円形のUV溶融石英(UVFS)または溶融石英の基板の表面にコーティングを施しています。ミラーの光軸に対して、45°傾いているとき、開口を水平方向から見ると、下図で示されているように円形になります。
取り付けオプション
これらのミラーの取り付けには、45°固定式またはキネマティック式の楕円ミラー用マウントをお勧めします。 当社の固定式45°ミラーマウントは、25 mm~25.4 mm(1インチ)や50 mm~50.8 mm(2インチ)の楕円ミラーに対応しています。これらはポストに取り付けたり、ネジ切り加工なしの標準キネマティックミラーマウントに固定することが出来ます。右写真は、45°楕円ミラー用マウントH45E2に楕円ミラーが取り付けられた例です。
当社のキネマティックミラーマウントは12 mm~12.7 mm(1/2インチ)、25 mm~25.4 mm(1インチ)、50 mm~50.8 mm(2インチ)の楕円ミラーにご使用いただけます。これらのマウントはケージシステムやレンズチューブSMシリーズに対応しており、多くの標準オプトメカニクスシステムにお使いいただけます。ページトップの写真は、直角キネマティックマウントKCB1E/Mに取り付けられた25.4 mm(1インチ)の保護膜付き金楕円ミラーです。
楕円ミラーに対して入射角45°の場合、開口は円形となります。
楕円ミラーの図を右に示します。Minor Axisは楕円の短軸、Major Axisは長軸です。ミラーの短軸周りに45°傾けると、ミラーの有効な開口面は下図のように円形になります。
Item # Prefix | BBE05a | PFE05b | BBE1a | PFE10b | UME1c | BBE2a | PFE20b |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Minor Axis | 1/2" (12.7 mm) | 1" (25.4 mm) | 2" (50.8 mm) | ||||
Major Axis | 0.71" (18.0 mm) | 1.41" (35.9 mm) | 2.83" (71.8 mm) | ||||
Diameter Tolerance | +0.0/-0.1 mm | ±0.1 mm | +0.0/-0.1 mm | ±0.1 mm | +0.0/-0.1 mm | +0.0/-0.1 mm | ±0.1 mm |
Thickness | 6.0 mm (0.24") | 6.0 mm (0.24") | 12.0 mm (0.47") | ||||
Thickness Tolerance | ±0.2 mm | ±0.2 mm | ±0.2 mm | ||||
Circular Clear Aperture | > Ø10.8 mm | > Ø11.4 mm | > Ø21.6 mm | > Ø22.9 mm | > Ø43.2 mm | > Ø45.7 mm | |
Parallelism | < 5 arcmin | < 3 arcmin | < 5 arcmin | < 5 arcmin | |||
Substrate | UV Fused Silicad | Fused Silica | UV Fused Silicad | ||||
Back Surface | Fine Ground | ||||||
Front Surface Flatness | λ/10 at 633 nm (Peak to Valley) | ||||||
Surface Quality | 40-20 Scratch-Dig |
Coating Specifications | |||||
---|---|---|---|---|---|
Item # Suffix | Coating Type | Reflectance (45° AOI) | Group Delay Dispersion | Damage Threshold | |
Pulsed | CWa,b | ||||
-E02 | Broadband Dielectric | Ravg > 99% from 400 nm to 750 nm | - | 0.25 J/cm2 (532 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.803 mm) | 550 W/cm (532 nm, Ø1.000 mm) |
-E03 | Broadband Dielectric | Ravg > 99% from 750 nm to 1100 nm | - | 0.205 J/cm2 (800 nm, 99 fs, 1 kHz, Ø0.166 mm) 1 J/cm2 (810 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.133 mm) 0.5 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.433 mm) | 10 kW/cm (1070 nm, Ø0.971 mm) |
-G01 | Protected Aluminum | Ravg > 90% from 450 nm to 2 µm, Ravg > 95% from 2 µm to 20 µm | - | 0.3 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø1.000 mm) | 100 W/cm (1.070 µm, Ø0.098 mm) 350 W/cm (10.6 µm, Ø0.339 mm) |
-P01 | Protected Silver | Ravg > 97% from 450 nm to 2 µm, Ravg > 95% from 2 µm to 20 µm | - | 0.225 J/cm2 (800 nm, 99 fs, 1 kHz, Ø0.167 mm) 1 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø1.010 mm) | 500 W/cm (1.07 µm, Ø0.974 mm) 1500 W/cm (10.6 µm, Ø0.339 mm) |
-AGc | Ultra-Fast Enhanced Silver | Rs > 99.0% and Rp > 98.5% from 750 nm to 1 µm | |GDDs| < 20 fs2 |GDDp| < 30 fs2 | 0.39 J/cm2 (800 nm, 52 fs FWHM, S-Pol, 1 Pulse) 0.18 J/cm2 (800 nm, 52 fs FWHM, S-Pol, 1000 Pulses) | - |
-M01 | Protected Gold | Ravg > 96% from 800 nm to 20 µm | - | 2 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø1.000 mm) | 500 W/cm (1.070 µm, Ø0.089 mm) 750 W/cm (10.6 µm, Ø0.339 mm) |
誘電体ミラーコーティング
下のグラフは、-E02(400 nm~750 nm)および-E03(750 nm~1100 nm)の誘電体コーティングにおける典型的な反射特性を示しています。グラフの網掛け部分は、このコーティングの反射率が非常に高いスペクトル範囲を示しています。ロット毎にバラツキがあるため、実際には、この推奨スペクトル範囲よりも広い範囲で高い反射率を示します。これらのデータについてご質問等は、当社までお問い合わせください。これらの2種類の誘電体コーティングのスペクトル範囲をまたぐようなミラーが必要な場合には、 金属コーティングミラーをご検討ください。
E02コーティング(400 nm~750 nm)
-E03コーティング(750 nm~1100 nm)
金属ミラーコーティング
グラフの青い網掛け部分は、このミラーをご使用になる際の推奨する波長範囲を示しています。この帯域の外側(特に反射率のグラフに変動や傾斜がみられる範囲)は品質管理として厳密に測定されたものではなく、ロット毎にバラつきがある可能性があります。
保護膜付きアルミニウムコーティング(450 nm~20 µm)
保護膜付き銀コーティング(450 nm~20 µm)
超短パルス用銀コーティング(750 nm~1 µm)
保護膜付き金コーティング(800 nm~20 µm)
Damage Threshold Specifications | ||
---|---|---|
Coating Designation (Item # Suffix) | Damage Threshold | |
-E02 | Pulsed | 0.25 J/cm2 (532 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.803 mm) |
CWa,b | 550 W/cm (532 nm, Ø1.000 mm) | |
-E03 | Pulsed | 0.205 J/cm2 (800 nm, 99 fs, 1 kHz, Ø0.166 mm) 1 J/cm2 (810 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.133 mm) 0.5 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø0.433 mm) |
CWa,b | 10 kW/cm (1070 nm, Ø0.971 mm) | |
-G01 | Pulsed | 0.3 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø1.000 mm) |
CWa | 100 W/cm (1.070 µm, Ø0.098 mm) 350 W/cm (10.6 µm, Ø0.339 mm) | |
-P01 | Pulsed | 0.225 J/cm2 (800 nm, 99 fs, 1 kHz, Ø0.167 mm) 1 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø1.010 mm) |
CWa | 500 W/cm (1.07 µm, Ø0.974 mm) 1500 W/cm (10.6 µm, Ø0.339 mm) | |
-AG | Pulsed | 0.39 J/cm2 (800 nm, 52 fs FWHM, S-Pol, 1 Pulse) 0.18 J/cm2 (800 nm, 52 fs FWHM, S-Pol, 1000 Pulses) |
-M01 | Pulsed | 2 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø1.000 mm) |
CWa | 500 W/cm (1.070 µm, Ø0.089 mm) 750 W/cm (10.6 µm, Ø0.339 mm) |
当社の楕円ミラーの損傷閾値データ
右の仕様は当社の楕円ミラーの損傷閾値の測定値です。コーティングの種類が同じであれば、ミラーのサイズにかかわらず損傷閾値の仕様は同じです。
レーザによる損傷閾値について
このチュートリアルでは、レーザ損傷閾値がどのように測定され、使用する用途に適切な光学素子の決定にその値をどのようにご利用いただけるかを総括しています。お客様のアプリケーションにおいて、光学素子を選択する際、光学素子のレーザによる損傷閾値(Laser Induced Damage Threshold :LIDT)を知ることが重要です。光学素子のLIDTはお客様が使用するレーザの種類に大きく依存します。連続(CW)レーザは、通常、吸収(コーティングまたは基板における)によって発生する熱によって損傷を引き起こします。一方、パルスレーザは熱的損傷が起こる前に、光学素子の格子構造から電子が引き剥がされることによって損傷を受けます。ここで示すガイドラインは、室温で新品の光学素子を前提としています(つまり、スクラッチ&ディグ仕様内、表面の汚染がないなど)。光学素子の表面に塵などの粒子が付くと、低い閾値で損傷を受ける可能性があります。そのため、光学素子の表面をきれいで埃のない状態に保つことをお勧めします。光学素子のクリーニングについては「光学素子クリーニングチュートリアル」をご参照ください。
テスト方法
当社のLIDTテストは、ISO/DIS 11254およびISO 21254に準拠しています。
初めに、低パワー/エネルギのビームを光学素子に入射します。その光学素子の10ヶ所に1回ずつ、設定した時間(CW)またはパルス数(決められたprf)、レーザを照射します。レーザを照射した後、倍率約100倍の顕微鏡を用いた検査で確認し、すべての確認できる損傷を調べます。特定のパワー/エネルギで損傷のあった場所の数を記録します。次に、そのパワー/エネルギを増やすか減らすかして、光学素子にさらに10ヶ所レーザを照射します。このプロセスを損傷が観測されるまで繰返します。損傷閾値は、光学素子が損傷に耐える、損傷が起こらない最大のパワー/エネルギになります。1つのミラーBB1-E02の試験結果は以下のようなヒストグラムになります。
上の写真はアルミニウムをコーティングしたミラーでLIDTテストを終えたものです。このテストは、損傷を受ける前のレーザのエネルギは0.43 J/cm2 (1064 nm、10 ns pulse、 10 Hz、Ø1.000 mm)でした。
Example Test Data | |||
---|---|---|---|
Fluence | # of Tested Locations | Locations with Damage | Locations Without Damage |
1.50 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
1.75 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
2.00 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
2.25 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
3.00 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
5.00 J/cm2 | 10 | 9 | 1 |
試験結果によれば、ミラーの損傷閾値は 2.00 J/cm2 (532 nm、10 ns pulse、10 Hz、 Ø0.803 mm)でした。尚、汚れや汚染によって光学素子の損傷閾値は大幅に低減されるため、こちらの試験はクリーンな光学素子で行っています。また、特定のロットのコーティングに対してのみ試験を行った結果ではありますが、当社の損傷閾値の仕様は様々な因子を考慮して、実測した値よりも低めに設定されており、全てのコーティングロットに対して適用されています。
CWレーザと長パルスレーザ
光学素子がCWレーザによって損傷を受けるのは、通常バルク材料がレーザのエネルギを吸収することによって引き起こされる溶解、あるいはAR(反射防止)コーティングのダメージによるものです[1]。1 µsを超える長いパルスレーザについてLIDTを論じる時は、CWレーザと同様に扱うことができます。
パルス長が1 nsと1 µs の間のときは、損傷は吸収、もしくは絶縁破壊のどちらかで発生していると考えることができます(CWとパルスのLIDT両方を調べなければなりません)。吸収は光学素子の固有特性によるものか、表面の不均一性によるものかのどちらかによって起こります。従って、LIDTは製造元の仕様以上の表面の質を有する光学素子にのみ有効です。多くの光学素子は、ハイパワーCWレーザで扱うことができる一方、アクロマティック複レンズのような接合レンズやNDフィルタのような高吸収光学素子は低いCWレーザ損傷閾値になる傾向にあります。このような低い損傷閾値は接着剤や金属コーティングにおける吸収や散乱によるものです。
繰返し周波数(prf)の高いパルスレーザは、光学素子に熱的損傷も引き起こします。この場合は吸収や熱拡散率のような因子が深く関係しており、残念ながらprfの高いレーザが熱的影響によって光学素子に損傷を引き起こす場合の信頼性のあるLIDTを求める方法は確立されておりません。prfの大きいビームでは、平均出力およびピークパワーの両方を等しいCW出力と比較する必要があります。また、非常に透過率の高い材料では、prfが上昇してもLIDTの減少は皆無かそれに近くなります。
ある光学素子の固有のCWレーザの損傷閾値を使う場合には、以下のことを知る必要があります。
- レーザの波長
- ビーム径(1/e2)
- ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
- レーザのパワー密度(トータルパワーをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
ビームのパワー密度はW/cmの単位で計算します。この条件下では、出力密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません(右グラフ参照)。平均線形パワー密度は、下の計算式で算出できます。
ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。次に、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときはビームの強度が1/e2の2倍のパワー密度を有します(右下図参照)。
次に、光学素子のLIDTの仕様の最大パワー密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です。おおよその目安として参考にできるのは、損傷閾値は波長に対して比例関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(つまり、1310 nmで10 W/cmのLIDTならば、655 nmでは5 W/cmと見積もります)。
この目安は一般的な傾向ですが、LIDTと波長の関係を定量的に示すものではありません。例えば、CW用途では、損傷はコーティングや基板の吸収によってより大きく変化し、必ずしも一般的な傾向通りとはなりません。上記の傾向はLIDT値の目安として参考にしていただけますが、LIDTの仕様波長と異なる場合には当社までお問い合わせください。パワー密度が光学素子の補正済みLIDTよりも小さい場合、この光学素子は目的の用途にご使用いただけます。
当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社は個別の情報やテスト結果の証明書を発行することもできます。損傷解析は、類似した光学素子を用いて行います(お客様の光学素子には損傷は与えません)。試験の費用や所要時間などの詳細は、当社までお問い合わせください。
パルスレーザ
先に述べたように、通常、パルスレーザはCWレーザとは異なるタイプの損傷を光学素子に引き起こします。パルスレーザは損傷を与えるほど光学素子を加熱しませんが、光学素子から電子をひきはがします。残念ながら、お客様のレーザに対して光学素子のLIDTの仕様を照らし合わせることは非常に困難です。パルスレーザのパルス幅に起因する光学素子の損傷には、複数の形態があります。以下の表中のハイライトされた列は当社の仕様のLIDT値が当てはまるパルス幅に対する概要です。
パルス幅が10-9 sより短いパルスについては、当社の仕様のLIDT値と比較することは困難です。この超短パルスでは、多光子アバランシェ電離などのさまざまなメカニクスが損傷機構の主流になります[2]。対照的に、パルス幅が10-7 sと10-4 sの間のパルスは絶縁破壊、または熱的影響により光学素子の損傷を引き起こすと考えられます。これは、光学素子がお客様の用途に適しているかどうかを決定するために、レーザービームに対してCWとパルス両方による損傷閾値を参照しなくてはならないということです。
Pulse Duration | t < 10-9 s | 10-9 < t < 10-7 s | 10-7 < t < 10-4 s | t > 10-4 s |
---|---|---|---|---|
Damage Mechanism | Avalanche Ionization | Dielectric Breakdown | Dielectric Breakdown or Thermal | Thermal |
Relevant Damage Specification | No Comparison (See Above) | Pulsed | Pulsed and CW | CW |
お客様のパルスレーザに対してLIDTを比較する際は、以下のことを確認いただくことが重要です。
- レーザの波長
- ビームのエネルギ密度(トータルエネルギをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
- レーザのパルス幅
- パルスの繰返周波数(prf)
- 実際に使用するビーム径(1/e2 )
- ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
ビームのエネルギ密度はJ/cm2の単位で計算します。右のグラフは、短パルス光源には、エネルギ密度が適した測定量であることを示しています。この条件下では、エネルギ密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません。ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。ここで、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときは一般にビームの強度が1/e2のときの2倍のパワー密度を有します。
次に、光学素子のLIDTの仕様と最大エネルギ密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です[3]。経験則から、損傷閾値は波長に対して以下のような平方根の関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(例えば、1064 nmで 1 J/cm2のLIDTならば、532 nmでは0.7 J/cm2と計算されます)。
波長を補正したエネルギ密度を得ました。これを以下のステップで使用します。
ビーム径は損傷閾値を比較する時にも重要です。LIDTがJ/cm2の単位で表される場合、スポットサイズとは無関係になりますが、ビームサイズが大きい場合、LIDTの不一致を引き起こす原因でもある不具合が、より明らかになる傾向があります[4]。ここで示されているデータでは、LIDTの測定には<1 mmのビーム径が用いられています。ビーム径が5 mmよりも大きい場合、前述のようにビームのサイズが大きいほど不具合の影響が大きくなるため、LIDT (J/cm2)はビーム径とは無関係にはなりません。
次に、パルス幅について補正します。パルス幅が長くなるほど、より大きなエネルギに光学素子は耐えることができます。パルス幅が1~100 nsの場合の近似式は以下のようになります。
お客様のレーザのパルス幅をもとに、光学素子の補正されたLIDTを計算するのにこの計算式を使います。お客様の最大エネルギ密度が、この補正したエネルギ密度よりも小さい場合、その光学素子はお客様の用途でご使用いただけます。ご注意いただきたい点は、10-9 s と10-7 sの間のパルスにのみこの計算が使えることです。パルス幅が10-7 sと10-4 sの間の場合には、CWのLIDTも調べなければなりません。
当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社では個別のテスト情報やテスト結果の証明書を発行することも可能です。詳細は、当社までお問い合わせください。
[1] R. M. Wood, Optics and Laser Tech. 29, 517 (1998).
[2] Roger M. Wood, Laser-Induced Damage of Optical Materials (Institute of Physics Publishing, Philadelphia, PA, 2003).
[3] C. W. Carr et al., Phys. Rev. Lett. 91, 127402 (2003).
[4] N. Bloembergen, Appl. Opt. 12, 661 (1973).
レーザーシステムが光学素子に損傷を引き起こすかどうか判断するプロセスを説明するために、レーザによって引き起こされる損傷閾値(LIDT)の計算例をいくつかご紹介します。同様の計算を実行したい場合には、右のボタンをクリックしてください。計算ができるスプレッドシートをダウンロードいただけます。ご使用の際には光学素子のLIDTの値と、レーザーシステムの関連パラメータを緑の枠内に入力してください。スプレッドシートでCWならびにパルスの線形パワー密度、ならびにパルスのエネルギ密度を計算できます。これらの値はスケーリング則に基づいて、光学素子のLIDTの調整スケール値を計算するのに用いられます。計算式はガウシアンビームのプロファイルを想定しているため、ほかのビーム形状(均一ビームなど)には補正係数を導入する必要があります。 LIDTのスケーリング則は経験則に基づいていますので、確度は保証されません。なお、光学素子やコーティングに吸収があると、スペクトル領域によってLIDTが著しく低くなる場合があります。LIDTはパルス幅が1ナノ秒(ns)未満の超短パルスには有効ではありません。
ガウシアンビームの最大強度は均一ビームの約2倍です。
CWレーザの例
波長1319 nm、ビーム径(1/e2)10 mm、パワー0.5 Wのガウシアンビームを生成するCWレーザーシステム想定します。このビームの平均線形パワー密度は、全パワーをビーム径で単純に割ると0.5 W/cmとなります。
しかし、ガウシアンビームの最大パワー密度は均一ビームの約2倍です(右のグラフ参照)。従って、システムのより正確な最大線形パワー密度は1 W/cmとなります。
アクロマティック複レンズAC127-030-CのCW LIDTは、1550 nmでテストされて350 W/cmとされています。CWの損傷閾値は通常レーザ光源の波長に直接スケーリングするため、LIDTの調整値は以下のように求められます。
LIDTの調整値は350 W/cm x (1319 nm / 1550 nm) = 298 W/cmと得られ、計算したレーザーシステムのパワー密度よりも大幅に高いため、この複レンズをこの用途に使用しても安全です。
ナノ秒パルスレーザの例:パルス幅が異なる場合のスケーリング
出力が繰返し周波数10 Hz、波長355 nm、エネルギ1 J、パルス幅2 ns、ビーム径(1/e2)1.9 cmのガウシアンビームであるNd:YAGパルスレーザーシステムを想定します。各パルスの平均エネルギ密度は、パルスエネルギをビームの断面積で割って求めます。
上で説明したように、ガウシアンビームの最大エネルギ密度は平均エネルギ密度の約2倍です。よって、このビームの最大エネルギ密度は約0.7 J/cm2です。
このビームのエネルギ密度を、広帯域誘電体ミラーBB1-E01のLIDT 1 J/cm2、そしてNd:YAGレーザーラインミラーNB1-K08のLIDT 3.5 J/cm2と比較します。LIDTの値は両方とも、波長355 nm、パルス幅10 ns、繰返し周波数10 Hzのレーザで計測しました。従って、より短いパルス幅に対する調整を行う必要があります。 1つ前のタブで説明したようにナノ秒パルスシステムのLIDTは、パルス幅の平方根にスケーリングします:
この調整係数により広帯域誘電体ミラーBB1-E01のLIDTは0.45 J/cm2に、Nd:YAGレーザーラインミラーのLIDTは1.6 J/cm2になり、これらをビームの最大エネルギ密度0.7 J/cm2と比較します。広帯域ミラーはレーザによって損傷を受ける可能性があり、より特化されたレーザーラインミラーがこのシステムには適していることが分かります。
ナノ秒パルスレーザの例:波長が異なる場合のスケーリング
波長1064 nm、繰返し周波数2.5 Hz、パルスエネルギ100 mJ、パルス幅10 ns、ビーム径(1/e2)16 mmのレーザ光を、NDフィルタで減衰させるようなパルスレーザーシステムを想定します。これらの数値からガウシアン出力における最大エネルギ密度は0.1 J/cm2になります。Ø25 mm、OD 1.0の反射型NDフィルタ NDUV10Aの損傷閾値は355 nm、10 nsのパルスにおいて0.05 J/cm2で、同様の吸収型フィルタ NE10Aの損傷閾値は532 nm、10 nsのパルスにおいて10 J/cm2です。1つ前のタブで説明したように光学素子のLIDTは、ナノ秒パルス領域では波長の平方根にスケーリングします。
スケーリングによりLIDTの調整値は反射型フィルタでは0.08 J/cm2、吸収型フィルタでは14 J/cm2となります。このケースでは吸収型フィルタが光学損傷を防ぐには適した選択肢となります。
マイクロ秒パルスレーザの例
パルス幅1 µs、パルスエネルギ150 µJ、繰返し周波数50 kHzで、結果的にデューティーサイクルが5%になるレーザーシステムについて考えてみます。このシステムはCWとパルスレーザの間の領域にあり、どちらのメカニズムでも光学素子に損傷を招く可能性があります。レーザーシステムの安全な動作のためにはCWとパルス両方のLIDTをレーザーシステムの特性と比較する必要があります。
この比較的長いパルス幅のレーザが、波長980 nm、ビーム径(1/e2)12.7 mmのガウシアンビームであった場合、線形パワー密度は5.9 W/cm、1パルスのエネルギ密度は1.2 x 10-4 J/cm2となります。これをポリマーゼロオーダ1/4波長板WPQ10E-980のLIDTと比較してみます。CW放射に対するLIDTは810 nmで5 W/cm、10 nsパルスのLIDTは810 nmで5 J/cm2です。前述同様、光学素子のCW LIDTはレーザ波長と線形にスケーリングするので、CWの調整値は980 nmで6 W/cmとなります。一方でパルスのLIDTはレーザ波長の平方根とパルス幅の平方根にスケーリングしますので、1 µsパルスの980 nmでの調整値は55 J/cm2です。光学素子のパルスのLIDTはパルスレーザのエネルギ密度よりはるかに大きいので、個々のパルスが波長板を損傷することはありません。しかしレーザの平均線形パワー密度が大きいため、高出力CWビームのように光学素子に熱的損傷を引き起こす可能性があります。
Posted Comments: | |
Oleksandr Srtilets
 (posted 2022-05-09 16:47:44.9) Hello, Is it possible to cut from the already done laser mirror elliptical mirror ?
We need to have elliptical mirror with R>99% and damage threshold more than 10 j/cm2, 1064 nm as in standart laser mirror. marcel.prayogo
 (posted 2018-12-26 21:50:36.723) I would like to know what the mass (g or kg) for PFE20-P01 is. YLohia
 (posted 2018-12-27 08:50:58.0) Hello, the mass of this item is approximately 76 g, as given in the engineering drawing: https://www.thorlabs.com/_sd.cfm?fileName=21550-E0W.pdf&partNumber=PFE20-P01 h.wu
 (posted 2018-03-29 12:44:41.67) Are the elliptical mirror blanks (economy optical flats) available? YLohia
 (posted 2018-03-30 05:21:50.0) Hello, thank you for contacting Thorlabs. Unfortunately, we currently do not stock elliptical mirror blanks. We will reach out to you directly to get your requirements in order to look into the possibility of offering custom blanks. david.vogt
 (posted 2017-12-19 10:07:43.797) It would be very helpful if there was an elliptical mirror with UV-enhanced aluminum. Is that in any way possible or is there a limitation that I am not aware of?
We would also be interested in a custom solution. nbayconich
 (posted 2017-12-19 10:58:07.0) Thank you for contacting Thorlabs. We can provide elliptical mirrors with UV-enhanced aluminum coating as a custom request. I will reach out to you directly with more information about our custom capabilities. user
 (posted 2016-05-15 15:14:02.457) The BBE2-E02 mirror is missing on the website. I can find it through search but it is not under the elliptical mirror page! besembeson
 (posted 2016-05-18 09:48:50.0) Response from Bweh at Thorlabs USA: We are working on making these available in a couple of weeks. user
 (posted 2015-08-07 12:14:19.597) Do you have any plans to offer an E01 coated 2" elliptical mirror? besembeson
 (posted 2015-09-24 09:53:57.0) Response from Bweh at Thorlabs USA: Not yet. We only provide this as a special item for now. bdada
 (posted 2011-04-21 16:55:00.0) Response from Buki at Thorlabs:
Thank you for using our Feedback Tool. We often provide custom sized optics and will contact you directly to discuss a custom sized elliptical mirror for your application. shshim
 (posted 2011-04-21 13:42:11.0) Is it possible to make a custom-size elliptical mirror whose diameter is between 1/2" and 1"?? |
E02広帯域誘電体コーティング楕円ミラーは、可視光域(400~750 nm)において高反射率が得られます。 広帯域誘電体コーティング楕円ミラーの動作波長範囲は、金属コーティングよりも狭くなりますが、その範囲において金属コーティングよりも高い反射率をもたらします。
右のプロット図は、E02コーティング反射率の波長特性の測定値を示しており、網掛けの部分は400~750 nmのスペクトル範囲です。このデータは、45°の入射角で得られたものです。
右のグラフの生データを含むエクセル形式のシートは、 こちらからダウンロードいただけます。
E03広帯域誘電体コーティング楕円ミラーは、近赤外域 (750~1100 nm)において高反射率が得られます。 広帯域誘電体コーティング楕円ミラー の動作波長範囲は、金属コーティングよりも狭くなりますが、その範囲において金属コーティングよりもより高い反射率をもたらします。
右のグラフは、E03コーティング反射率の波長特性の測定値を示しており、網掛けの部分は750~1100 nmのスペクトル範囲です。このデータは、45°の入射角で得られたものです。
右のグラフの生データを含むエクセル形式のシートは、こちらからダウンロードいただけます。
保護膜付きアルミニウムコーティング付きミラーは、多くの広帯域な用途に対して利用できます。 SiO2 コーティングは傷がつきやすいアルミニウムを保護し、研究用や産業用に適しています。 保護膜付きアルミニウムコーティングは、高湿度環境で保護膜付き銀コーティングよりも変色しにくく、無垢のアルミニウムコーティングの反射に最も近い反射率を示します。 これらのミラーは平均反射率がスペクトル域450 nm~2 µmでは90%以上で、2~20 µmでは95%以上です。
右のグラフは、保護膜付きアルミニウムミラーの反射率の測定値を、波長(単位: µm)の関数として示しています。 青い網掛け部分は、450 nm~20 µmのスペクトル範囲を示しています。 データは45°の入射角で無偏光の光を用いて得られたものです。 右のグラフの生データを含むエクセル形式のシートは、こちらからダウンロードいただけます。
左の写真のように、ミラーには、楕円形の短軸に沿って2箇所の非コーティング部分があります。 これは製造工程において生じるもので、ミラーの開口に影響するものではありません(詳細は「仕様」タブを参照してください)。
銀コーティング付きミラーは、全ての金属コーティングミラーの中で、可視域の波長範囲で最も高い反射率を有しています。 銀は450 nm~20 µmで高い反射率を有しています。 酸化から銀を保護する為に、SiO2でオーバーコーティングされています。 このオーバーコーティングは銀の変色を防ぎますが、高湿度環境でのご使用はお避けください。
右のグラフは、保護膜付き銀ミラーの反射率の測定値を波長の関数として示しています。 青い網掛け部分は、450 nm~20 µmのスペクトル範囲を示しています。 データは45°の入射角で無偏光の光を用いて得られたものです。 右のグラフの生データを含むエクセル形式のシートは、こちらからダウンロードいただけます。
左の写真のように、ミラーには、楕円形の短軸に沿って2ヵ所の非コーティング部分があります。 これは製造工程において生じるもので、ミラーの開口に影響するものではありません(詳細は「仕様」タブを参照してください)。
取扱いについて
銀コーティング付きミラーは、環境や不適切な取り扱いによって損傷しやすいため、特にご注意いただく必要があります。指紋の付着、研磨性のある面との接触、高湿/高温の環境などにより、保護膜の効果が損なわれ、銀コーティングの酸化や劣化が起きやすくなります。 銀ミラーを取り扱う際は、通常の光学素子の取扱い方法に従ってください。 光学素子の表面に指の油分などが付着するのを防ぐために、Latex製手袋などの着用をお勧めします。こうした対策を講じたうえで、ミラー面やエッジには触れないようにご注意ください。 銀ミラーは、室温で、できるだけ湿度の低い場所で使用/保管を行ってください。ミラーなどの光学素子のクリーニング法については、「光学素子の取扱いについてのチュートリアル」をご参照ください。
こちらの超短パルス光用銀ミラーは、当社の700 nm~930 nm用の低群遅延分散(GDD)ミラーと比較すると、群遅延分散は同様ですが、わずかに波長範囲が広く、また反射率はわずかに低くなります。
右のグラフは、UV域強化アルミニウムの反射率の波長特性(測定値)を示しています。青い網掛け部分は、750 nm~1000 nmのスペクトル範囲を示しています。これらのデータは、無偏光、S偏光、P偏光の光が45°の角度で入射する条件で取得されています。右のグラフの生データを含むエクセル形式のシートは、こちらからダウンロードいただけます。
左の写真のように、ミラーには、楕円形の短軸に沿って2箇所の非コーティング部分があります。これは製造工程において生じるもので、ミラーの開口に影響するものではありません(詳細は「仕様」タブを参照してください)。
取扱いについて
銀コーティング付きミラーは、環境や不適切な取り扱いによって損傷しやすいため、特にご注意いただく必要があります。指紋の付着、研磨性のある面との接触、高湿/高温の環境などにより、保護膜の効果が損なわれ、銀コーティングの酸化や劣化が起きやすくなります。 銀ミラーを取り扱う際は、通常の光学素子の取扱い方法に従ってください。光学素子の表面に指の油分などが付着するのを防ぐために、Latex製手袋などの着用をお勧めします。こうした対策を講じたうえで、ミラー面やエッジには触れないようにご注意ください。銀ミラーは、室温で、できるだけ湿度の低い場所で使用/保管を行ってください。ミラーなどの光学素子のクリーニング法については、「光学素子の取扱いについてのチュートリアル」をご参照ください。
保護膜付き金コーティングは800 nm~20 µmにおいて96%以上の平均反射率を有しており、赤外全域でお使いいただけます。 金にSiO2保護膜をオーバーコーティングすることにより、傷から守り、クリーニングがしやすくなっています。
右のグラフは、保護膜付き金ミラーの反射率の測定値を波長の関数として示しています。 青い網掛け部分は、800 nm~20 µmのスペクトル範囲を示しています。 データは45°の入射角で無偏光の光を用いて得られたものです。 右のグラフの生データを含むエクセル形式のシートは、こちらからダウンロードいただけます。
左の写真のように、ミラーには、楕円形の短軸に沿って2ヵ所の非コーティング部分があります。 これは製造工程において生じるもので、ミラーの開口に影響するものではありません(詳細は「仕様」タブをご参照ください)。