補償光学により画質を向上
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補償光学による多光子網膜像の向上
研究者:
J. M. Bueno, E. J. Gualda, and P. Arta
二光子励起蛍光(TPEF)および第二高調波発生(SHG)顕微鏡等の多光子イメージング技術は、非侵襲的な方法で、細胞内生物学的構造の高精細画像を提供します。共焦点顕微鏡法と比較して、焦点面外の蛍光を排除し、軸方向の分解能を向上させます。二光子過程の際、、試料への照射を可視光や紫外線ではなく赤外線放射で行うことによって、試料の光毒性は減少し、より深い浸透が可能になります。 (a) (b) (c) (d) 図1. 人間の網膜組織切片のTPEF断面像(上パネル)とヒトの強膜部のSHG画像(下パネル)について、補償光学を使った場合(フレームbとd)と補償光学なしの場合(フレームaとc)の比較。強度スケールは、画像ペアごとに一定です。 実験中、Buenoらはシャックハルトマン波面センサおよび変形ミラー(DM)を使用して、波面収差(WAs)の測定と補正を行いました。これらの収差は基本的に、光源のレーザ共振器(110fs、76 MHz Ti: 出力760 nmのサファイアレーザ)におけるミスアライメントに起因します。これらの結果、ビーム品質の向上につながりました。試料平面での平均出力は、検査された試料によって、2~200 mWとなりました。補償光学が装備された多光子装置を使用して、Buenoらはパラフィン包埋された人間の眼の組織(網膜と強膜)の厚さ5μm非染色横断(XZ)セクションのTPEFおよびSHG画像を入手しました。図1に表示されているように、補償光学を使用すると信号強度はTPEF画像に対して3倍、SHG画像に対しては2倍向上しました。補償光学により向上した画像コントラストは、網膜線維層(RNFL)や光受容体層(PRL)等の構造およびさまざまな中間層の視覚化を向上させることができます。著しい光損傷なく、各網膜層が撮像されました。 当社の補償光学キットは、レーザ光源による低次収差のモニタと補正を多光子画像コントラストおよび軸方向分解能の向上ために用いることのできる、費用対効果の高いソリューションです。網膜研究での使用には、神経節細胞の消失に関連する緑内障等の眼球病状の早期診断(図2参照)の臨床応用の可能性があります。 (b) (a) 図2. 神経節細胞(GC)と血管 (BV)を含む網膜部の、補償光学補正なしで得られたTPEF画像(a)と補正して得られた画像(b)。(b)の全強度は、(a)の強度よりも3倍高い。 |
参考文献:
1) J. M. Bueno, E. J. Gualda, and P. Artal, J. of Biomedical Optics. 15, November/December 2010.
ヒトの細胞組織はスペイン、ムルシアのHospital Universitario Virgen de la Arrixaca、Opthalmology Serviceにより提供された、健康なドナーの眼球から抽出されました。
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