レトロリフレクタープリズム(鏡面反射)、マウント付き
- Backside Gold Coating Minimizes Polarization Change
- 180° Reflection Inverts Image
- <3 arcsec Beam Deviation
- Mounted in SM-Threaded Lens Tubes
PS977M-M01B
SM05 Mount
PS976M-M01B
SM2 Mount
PS975M-M01B
SM1 Mount
Please Wait
Common Specifications | |||
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Prism Material | N-BK7a Grade A Fine Anneal | ||
Wavelength Rangeb | 800 - 2000 nm | ||
Reflective Coating | Gold with Black Overpaint | ||
Diameter Tolerance | +0.0 / -0.1 mm | ||
Surface Quality | 40-20 Scratch-Dig | ||
Front Surface Flatness | < λ/10 @ 633 nm | ||
Beam Deviationc | < 3 arcsec | ||
Damage Threshold | 1.25 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø1.01 mm) |
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マウント付きレトロリフレクタの寸法
特長
- N-BK7ガラス製
- 上下左右の反転した像を180°方向に反射
- 鏡面は偏光の方位角回転< 10°となるように設計
- 3種類のサイズ
- Ø12.7 mm、SM05ネジレンズチューブ付き
- Ø25.4 mm、SM1ネジレンズチューブ付き
- Ø50.0 mm、SM2ネジレンズチューブ付き
- 反射面は金コーティング、黒色塗装付き
- 波長範囲:800~2000 nm
こちらのマウント付きレトロリフレクタは単体のN-BK7ガラスで作られた三面体プリズムです。裏面にはコーティングが施されており、その第2の表面で鏡面反射されることで偏光の変化や発生する楕円率が小さく抑えられます。反射面にコーティングの無いレトロリフレクタでは内部全反射(TIR)に依存することになり、偏光状態に大きな影響が現れます。
このプリズムは一般にコーナーキューブとも呼ばれています。このページのプリズムは、刻印の付いたSMネジ付きレンズチューブに取り付けられています。Ø25.4 mm、Ø50.0 mm、Ø50.0 mmのプリズムを、それぞれSM05L05、SM1L10、SM2L20の各レンズチューブに収めた、3種類の製品をご用意しております。各レトロリフレクタは、Delrin®*取付けアダプタによってレンズチューブの中央に取付けられ、低応力固定リングで固定されています。レトロリフレクタは、移動ステージと組み合わせてよくオプティカルディレイラインを構成するのに使用されます。
レトロリフレクタープリズム
レトロリフレクタは、3回の反射によって、像やビームを元の方向に向かって反射します。ビームや像は、入射角が0°でない場合でも、反転して180°方向に反射されます。これらのプリズムはアライメントの影響を受けないため、レトロリフレクタに適した光学素子です。これらのレトロリフレクタープリズムでは、入射ビームと反射ビームの間の角度は3 arcsec以内です。しかし、入射ビームと反射ビームが光学素子の正確な中心を通過しないと、これらのビームはオーバーラップせずに、お互いにシフトします。たとえば、入射ビームが光学素子の中心より3 mm右にずれると、反射ビームは中心より3 mm左にずれて出射します。このプリズムは、下表の最大ビーム径のビームに対してレトロリフレクタとしてお使いいただけます。
プリズムの第2の面である金コーティングは、指紋や弱溶剤からプリズムを保護するために黒色塗装が施されています。
レンズチューブ用マウント
こちらのマウント付きレトロリフレクタープリズムは当社のレンズチューブ、ケージシステムおよび固定式レンズマウント(左上の写真参照)に直接取付けが可能なため、光学系にスムーズに組み込むことができます。また、筐体があることで、プリズム表面への指紋の付着や損傷の危険性を軽減します。型番や機能の概略図が刻印されているため、製品の識別も容易です。
ご用途に適したプリズムの選択については、上記の「プリズムガイド」をご参照ください。
*Delrin®はDupont Polymers社の登録商標です。
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生データはこちらからダウンロードいただけます。
グラフは厚さ10 mmのN-BK7基板の透過特性を示しています。短波長側での損失は主にフレネル反射によるもので、長波長側での損失は主に基板材料の吸収によるものです。
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このグラフは、金コーティングを施した3種類のサイズのN-BK7製レトロリフレクタについての理論データです。なお、長波長側において大きなプリズムほど反射率が低下するのは、基板を通る光路が長くなるためです。
SM05 Threading: Ø1/2" Lens Tubes, 16 mm Cage Systems | |||
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External Thread, 0.535"-40.0 UNS-2A | Internal Thread, 0.535"-40.0 UNS-2B | ||
Max Major Diameter | 0.5340" | Min Major Diameter | 0.5350" |
Min Major Diameter | 0.5289" | Min Pitch Diameter | 0.5188" |
Max Pitch Diameter | 0.5178" | Max Pitch Diameter | 0.5230" |
Min Pitch Diameter | 0.5146" | Min Minor Diameter (and 83.3% of Thread) | 0.508" |
Max Minor Diameter | 0.5069" | Max Minor Diameter (and 64.9% of Thread) | 0.514" |
RMS Threading: Objective, Scan, and Tube Lenses | |||
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External Thread, 0.800"-36.0 UNS-2A | Internal Thread, 0.800"-36.0 UNS-2B | ||
Max Major Diameter | 0.7989" | Min Major Diameter | 0.8000" |
Min Major Diameter | 0.7934" | Min Pitch Diameter | 0.7820" |
Max Pitch Diameter | 0.7809" | Max Pitch Diameter | 0.7866" |
Min Pitch Diameter | 0.7774" | Min Minor Diameter (and 83.3% of Thread) | 0.770" |
Max Minor Diameter | 0.7688" | Max Minor Diameter (and 64.9% of Thread) | 0.777" |
C-Mount Threading: Machine Vision Lenses, CCD/CMOS Cameras | |||
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External Thread, 1.000"-32.0 UN-2A | Internal Thread, 1.000"-32.0 UN-2B | ||
Max Major Diameter | 0.9989" | Min Major Diameter | 1.0000" |
Min Major Diameter | 0.9929" | Min Pitch Diameter | 0.9797" |
Max Pitch Diameter | 0.9786" | Max Pitch Diameter | 0.9846" |
Min Pitch Diameter | 0.9748" | Min Minor Diameter (and 83.3% of Thread) | 0.966" |
Max Minor Diameter | 0.9651" | Max Minor Diameter (and 64.9% of Thread) | 0.974" |
SM1 Threading: Ø1" Lens Tubes, 30 mm Cage Systems | |||
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External Thread, 1.035"-40.0 UNS-2A | Internal Thread, 1.035"-40.0 UNS-2B | ||
Max Major Diameter | 1.0339" | Min Major Diameter | 1.0350" |
Min Major Diameter | 1.0288" | Min Pitch Diameter | 1.0188" |
Max Pitch Diameter | 1.0177" | Max Pitch Diameter | 1.0234" |
Min Pitch Diameter | 1.0142" | Min Minor Diameter (and 83.3% of Thread) | 1.008" |
Max Minor Diameter | 1.0068" | Max Minor Diameter (and 64.9% of Thread) | 1.014" |
SM30 Threading: Ø30 mm Lens Tubes | |||
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External Thread, M30.5 x 0.5 – 6H/6g | Internal Thread, M30.5 x 0.5 – 6H/6g | ||
Max Major Diameter | 30.480 mm | Min Major Diameter | 30.500 mm |
Min Major Diameter | 30.371 mm | Min Pitch Diameter | 30.175 mm |
Max Pitch Diameter | 30.155 mm | Max Pitch Diameter | 30.302 mm |
Min Pitch Diameter | 30.059 mm | Min Minor Diameter (and 83.3% of Thread) | 29.959 mm |
Max Minor Diameter | 29.938 mm | Max Minor Diameter (and 64.9% of Thread) | 30.094 mm |
SM1.5 Threading: Ø1.5" Lens Tubes | |||
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External Thread, 1.535"-40 UNS-2A | Internal Thread, 1.535"-40 UNS-2B | ||
Max Major Diameter | 1.5339" | Min Major Diameter | 1.535" |
Min Major Diameter | 1.5288" | Min Pitch Diameter | 1.5188" |
Max Pitch Diameter | 1.5177" | Max Pitch Diameter | 1.5236" |
Min Pitch Diameter | 1.5140" | Min Minor Diameter (and 83.3% of Thread) | 1.508" |
Max Minor Diameter | 1.5068" | Max Minor Diameter (and 64.9% of Thread) | 1.514" |
SM2 Threading: Ø2" Lens Tubes, 60 mm Cage Systems | |||
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External Thread, 2.035"-40.0 UNS-2A | Internal Thread, 2.035"-40.0 UNS-2B | ||
Max Major Diameter | 2.0338" | Min Major Diameter | 2.0350" |
Min Major Diameter | 2.0287" | Min Pitch Diameter | 2.0188" |
Max Pitch Diameter | 2.0176" | Max Pitch Diameter | 2.0239" |
Min Pitch Diameter | 2.0137" | Min Minor Diameter (and 83.3% of Thread) | 2.008" |
Max Minor Diameter | 2.0067" | Max Minor Diameter (and 64.9% of Thread) | 2.014" |
SM3 Threading: Ø3" Lens Tubes | |||
---|---|---|---|
External Thread, 3.035"-40.0 UNS-2A | Internal Thread, 3.035"-40.0 UNS-2B | ||
Max Major Diameter | 3.0337" | Min Major Diameter | 3.0350" |
Min Major Diameter | 3.0286" | Min Pitch Diameter | 3.0188" |
Max Pitch Diameter | 3.0175" | Max Pitch Diameter | 3.0242" |
Min Pitch Diameter | 3.0133" | Min Minor Diameter (and 83.3% of Thread) | 3.008" |
Max Minor Diameter | 3.0066" | Max Minor Diameter (and 64.9% of Thread) | 3.014" |
SM4 Threading: Ø4" Lens Tubes | |||
---|---|---|---|
External Thread, 4.035"-40 UNS-2A | Internal Thread, 4.035"-40.0 UNS-2B | ||
Max Major Diameter | 4.0337" | Min Major Diameter | 4.0350" |
Min Major Diameter | 4.0286" | Min Pitch Diameter | 4.0188" |
Max Pitch Diameter | 4.0175" | Max Pitch Diameter | 4.0245" |
Min Pitch Diameter | 4.0131" | Min Minor Diameter (and 83.3% of Thread) | 4.008" |
Max Minor Diameter | 4.0066" | Max Minor Diameter (and 64.9% of Thread) | 4.014" |
N-BK7 Damage Threshold Specifications | |
---|---|
Coating Designation (Item # Suffix) | Damage Threshold |
-M01B | 1.25 J/cm2 (1064 nm, 10 ns, 10 Hz, Ø1.01 mm) |
裏面コーティング付きN-BK7レトロリフレクタの損傷閾値データ
右の仕様は裏面コーティング付きの N-BK7レトロリフレクタープリズムの測定値です。損傷閾値の仕様はコーティングの種類が同じであればサイズにかかわらず同じです。
レーザによる損傷閾値について
このチュートリアルでは、レーザ損傷閾値がどのように測定され、使用する用途に適切な光学素子の決定にその値をどのようにご利用いただけるかを総括しています。お客様のアプリケーションにおいて、光学素子を選択する際、光学素子のレーザによる損傷閾値(Laser Induced Damage Threshold :LIDT)を知ることが重要です。光学素子のLIDTはお客様が使用するレーザの種類に大きく依存します。連続(CW)レーザは、通常、吸収(コーティングまたは基板における)によって発生する熱によって損傷を引き起こします。一方、パルスレーザは熱的損傷が起こる前に、光学素子の格子構造から電子が引き剥がされることによって損傷を受けます。ここで示すガイドラインは、室温で新品の光学素子を前提としています(つまり、スクラッチ&ディグ仕様内、表面の汚染がないなど)。光学素子の表面に塵などの粒子が付くと、低い閾値で損傷を受ける可能性があります。そのため、光学素子の表面をきれいで埃のない状態に保つことをお勧めします。光学素子のクリーニングについては「光学素子クリーニングチュートリアル」をご参照ください。
テスト方法
当社のLIDTテストは、ISO/DIS 11254およびISO 21254に準拠しています。
初めに、低パワー/エネルギのビームを光学素子に入射します。その光学素子の10ヶ所に1回ずつ、設定した時間(CW)またはパルス数(決められたprf)、レーザを照射します。レーザを照射した後、倍率約100倍の顕微鏡を用いた検査で確認し、すべての確認できる損傷を調べます。特定のパワー/エネルギで損傷のあった場所の数を記録します。次に、そのパワー/エネルギを増やすか減らすかして、光学素子にさらに10ヶ所レーザを照射します。このプロセスを損傷が観測されるまで繰返します。損傷閾値は、光学素子が損傷に耐える、損傷が起こらない最大のパワー/エネルギになります。1つのミラーBB1-E02の試験結果は以下のようなヒストグラムになります。
上の写真はアルミニウムをコーティングしたミラーでLIDTテストを終えたものです。このテストは、損傷を受ける前のレーザのエネルギは0.43 J/cm2 (1064 nm、10 ns pulse、 10 Hz、Ø1.000 mm)でした。
Example Test Data | |||
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Fluence | # of Tested Locations | Locations with Damage | Locations Without Damage |
1.50 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
1.75 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
2.00 J/cm2 | 10 | 0 | 10 |
2.25 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
3.00 J/cm2 | 10 | 1 | 9 |
5.00 J/cm2 | 10 | 9 | 1 |
試験結果によれば、ミラーの損傷閾値は 2.00 J/cm2 (532 nm、10 ns pulse、10 Hz、 Ø0.803 mm)でした。尚、汚れや汚染によって光学素子の損傷閾値は大幅に低減されるため、こちらの試験はクリーンな光学素子で行っています。また、特定のロットのコーティングに対してのみ試験を行った結果ではありますが、当社の損傷閾値の仕様は様々な因子を考慮して、実測した値よりも低めに設定されており、全てのコーティングロットに対して適用されています。
CWレーザと長パルスレーザ
光学素子がCWレーザによって損傷を受けるのは、通常バルク材料がレーザのエネルギを吸収することによって引き起こされる溶解、あるいはAR(反射防止)コーティングのダメージによるものです[1]。1 µsを超える長いパルスレーザについてLIDTを論じる時は、CWレーザと同様に扱うことができます。
パルス長が1 nsと1 µs の間のときは、損傷は吸収、もしくは絶縁破壊のどちらかで発生していると考えることができます(CWとパルスのLIDT両方を調べなければなりません)。吸収は光学素子の固有特性によるものか、表面の不均一性によるものかのどちらかによって起こります。従って、LIDTは製造元の仕様以上の表面の質を有する光学素子にのみ有効です。多くの光学素子は、ハイパワーCWレーザで扱うことができる一方、アクロマティック複レンズのような接合レンズやNDフィルタのような高吸収光学素子は低いCWレーザ損傷閾値になる傾向にあります。このような低い損傷閾値は接着剤や金属コーティングにおける吸収や散乱によるものです。
繰返し周波数(prf)の高いパルスレーザは、光学素子に熱的損傷も引き起こします。この場合は吸収や熱拡散率のような因子が深く関係しており、残念ながらprfの高いレーザが熱的影響によって光学素子に損傷を引き起こす場合の信頼性のあるLIDTを求める方法は確立されておりません。prfの大きいビームでは、平均出力およびピークパワーの両方を等しいCW出力と比較する必要があります。また、非常に透過率の高い材料では、prfが上昇してもLIDTの減少は皆無かそれに近くなります。
ある光学素子の固有のCWレーザの損傷閾値を使う場合には、以下のことを知る必要があります。
- レーザの波長
- ビーム径(1/e2)
- ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
- レーザのパワー密度(トータルパワーをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
ビームのパワー密度はW/cmの単位で計算します。この条件下では、出力密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません(右グラフ参照)。平均線形パワー密度は、下の計算式で算出できます。
ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。次に、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときはビームの強度が1/e2の2倍のパワー密度を有します(右下図参照)。
次に、光学素子のLIDTの仕様の最大パワー密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です。おおよその目安として参考にできるのは、損傷閾値は波長に対して比例関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(つまり、1310 nmで10 W/cmのLIDTならば、655 nmでは5 W/cmと見積もります)。
この目安は一般的な傾向ですが、LIDTと波長の関係を定量的に示すものではありません。例えば、CW用途では、損傷はコーティングや基板の吸収によってより大きく変化し、必ずしも一般的な傾向通りとはなりません。上記の傾向はLIDT値の目安として参考にしていただけますが、LIDTの仕様波長と異なる場合には当社までお問い合わせください。パワー密度が光学素子の補正済みLIDTよりも小さい場合、この光学素子は目的の用途にご使用いただけます。
当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社は個別の情報やテスト結果の証明書を発行することもできます。損傷解析は、類似した光学素子を用いて行います(お客様の光学素子には損傷は与えません)。試験の費用や所要時間などの詳細は、当社までお問い合わせください。
パルスレーザ
先に述べたように、通常、パルスレーザはCWレーザとは異なるタイプの損傷を光学素子に引き起こします。パルスレーザは損傷を与えるほど光学素子を加熱しませんが、光学素子から電子をひきはがします。残念ながら、お客様のレーザに対して光学素子のLIDTの仕様を照らし合わせることは非常に困難です。パルスレーザのパルス幅に起因する光学素子の損傷には、複数の形態があります。以下の表中のハイライトされた列は当社の仕様のLIDT値が当てはまるパルス幅に対する概要です。
パルス幅が10-9 sより短いパルスについては、当社の仕様のLIDT値と比較することは困難です。この超短パルスでは、多光子アバランシェ電離などのさまざまなメカニクスが損傷機構の主流になります[2]。対照的に、パルス幅が10-7 sと10-4 sの間のパルスは絶縁破壊、または熱的影響により光学素子の損傷を引き起こすと考えられます。これは、光学素子がお客様の用途に適しているかどうかを決定するために、レーザービームに対してCWとパルス両方による損傷閾値を参照しなくてはならないということです。
Pulse Duration | t < 10-9 s | 10-9 < t < 10-7 s | 10-7 < t < 10-4 s | t > 10-4 s |
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Damage Mechanism | Avalanche Ionization | Dielectric Breakdown | Dielectric Breakdown or Thermal | Thermal |
Relevant Damage Specification | No Comparison (See Above) | Pulsed | Pulsed and CW | CW |
お客様のパルスレーザに対してLIDTを比較する際は、以下のことを確認いただくことが重要です。
- レーザの波長
- ビームのエネルギ密度(トータルエネルギをビームの強度が1/e2の範囲の面積で割ったもの)
- レーザのパルス幅
- パルスの繰返周波数(prf)
- 実際に使用するビーム径(1/e2 )
- ビームのおおよその強度プロファイル(ガウシアン型など)
ビームのエネルギ密度はJ/cm2の単位で計算します。右のグラフは、短パルス光源には、エネルギ密度が適した測定量であることを示しています。この条件下では、エネルギ密度はスポットサイズとは無関係になります。つまり、スポットサイズの変化に合わせてLIDTを計算し直す必要がありません。ここでは、ビーム強度プロファイルは一定であると仮定しています。ここで、ビームがホットスポット、または他の不均一な強度プロファイルの場合を考慮して、おおよその最大パワー密度を計算する必要があります。ご参考までに、ガウシアンビームのときは一般にビームの強度が1/e2のときの2倍のパワー密度を有します。
次に、光学素子のLIDTの仕様と最大エネルギ密度を比較しましょう。損傷閾値の測定波長が光学素子に使用する波長と異なっている場合には、その損傷閾値は適宜補正が必要です[3]。経験則から、損傷閾値は波長に対して以下のような平方根の関係であるということです。短い波長で使う場合、損傷閾値は低下します(例えば、1064 nmで 1 J/cm2のLIDTならば、532 nmでは0.7 J/cm2と計算されます)。
波長を補正したエネルギ密度を得ました。これを以下のステップで使用します。
ビーム径は損傷閾値を比較する時にも重要です。LIDTがJ/cm2の単位で表される場合、スポットサイズとは無関係になりますが、ビームサイズが大きい場合、LIDTの不一致を引き起こす原因でもある不具合が、より明らかになる傾向があります[4]。ここで示されているデータでは、LIDTの測定には<1 mmのビーム径が用いられています。ビーム径が5 mmよりも大きい場合、前述のようにビームのサイズが大きいほど不具合の影響が大きくなるため、LIDT (J/cm2)はビーム径とは無関係にはなりません。
次に、パルス幅について補正します。パルス幅が長くなるほど、より大きなエネルギに光学素子は耐えることができます。パルス幅が1~100 nsの場合の近似式は以下のようになります。
お客様のレーザのパルス幅をもとに、光学素子の補正されたLIDTを計算するのにこの計算式を使います。お客様の最大エネルギ密度が、この補正したエネルギ密度よりも小さい場合、その光学素子はお客様の用途でご使用いただけます。ご注意いただきたい点は、10-9 s と10-7 sの間のパルスにのみこの計算が使えることです。パルス幅が10-7 sと10-4 sの間の場合には、CWのLIDTも調べなければなりません。
当社のウェブ上の損傷閾値の仕様と我々が行った実際の実験の値の間にはある程度の差があります。これはロット間の違いによって発生する誤差を許容するためです。ご要求に応じて、当社では個別のテスト情報やテスト結果の証明書を発行することも可能です。詳細は、当社までお問い合わせください。
[1] R. M. Wood, Optics and Laser Tech. 29, 517 (1998).
[2] Roger M. Wood, Laser-Induced Damage of Optical Materials (Institute of Physics Publishing, Philadelphia, PA, 2003).
[3] C. W. Carr et al., Phys. Rev. Lett. 91, 127402 (2003).
[4] N. Bloembergen, Appl. Opt. 12, 661 (1973).
レーザーシステムが光学素子に損傷を引き起こすかどうか判断するプロセスを説明するために、レーザによって引き起こされる損傷閾値(LIDT)の計算例をいくつかご紹介します。同様の計算を実行したい場合には、右のボタンをクリックしてください。計算ができるスプレッドシートをダウンロードいただけます。ご使用の際には光学素子のLIDTの値と、レーザーシステムの関連パラメータを緑の枠内に入力してください。スプレッドシートでCWならびにパルスの線形パワー密度、ならびにパルスのエネルギ密度を計算できます。これらの値はスケーリング則に基づいて、光学素子のLIDTの調整スケール値を計算するのに用いられます。計算式はガウシアンビームのプロファイルを想定しているため、ほかのビーム形状(均一ビームなど)には補正係数を導入する必要があります。 LIDTのスケーリング則は経験則に基づいていますので、確度は保証されません。なお、光学素子やコーティングに吸収があると、スペクトル領域によってLIDTが著しく低くなる場合があります。LIDTはパルス幅が1ナノ秒(ns)未満の超短パルスには有効ではありません。
ガウシアンビームの最大強度は均一ビームの約2倍です。
CWレーザの例
波長1319 nm、ビーム径(1/e2)10 mm、パワー0.5 Wのガウシアンビームを生成するCWレーザーシステム想定します。このビームの平均線形パワー密度は、全パワーをビーム径で単純に割ると0.5 W/cmとなります。
しかし、ガウシアンビームの最大パワー密度は均一ビームの約2倍です(右のグラフ参照)。従って、システムのより正確な最大線形パワー密度は1 W/cmとなります。
アクロマティック複レンズAC127-030-CのCW LIDTは、1550 nmでテストされて350 W/cmとされています。CWの損傷閾値は通常レーザ光源の波長に直接スケーリングするため、LIDTの調整値は以下のように求められます。
LIDTの調整値は350 W/cm x (1319 nm / 1550 nm) = 298 W/cmと得られ、計算したレーザーシステムのパワー密度よりも大幅に高いため、この複レンズをこの用途に使用しても安全です。
ナノ秒パルスレーザの例:パルス幅が異なる場合のスケーリング
出力が繰返し周波数10 Hz、波長355 nm、エネルギ1 J、パルス幅2 ns、ビーム径(1/e2)1.9 cmのガウシアンビームであるNd:YAGパルスレーザーシステムを想定します。各パルスの平均エネルギ密度は、パルスエネルギをビームの断面積で割って求めます。
上で説明したように、ガウシアンビームの最大エネルギ密度は平均エネルギ密度の約2倍です。よって、このビームの最大エネルギ密度は約0.7 J/cm2です。
このビームのエネルギ密度を、広帯域誘電体ミラーBB1-E01のLIDT 1 J/cm2、そしてNd:YAGレーザーラインミラーNB1-K08のLIDT 3.5 J/cm2と比較します。LIDTの値は両方とも、波長355 nm、パルス幅10 ns、繰返し周波数10 Hzのレーザで計測しました。従って、より短いパルス幅に対する調整を行う必要があります。 1つ前のタブで説明したようにナノ秒パルスシステムのLIDTは、パルス幅の平方根にスケーリングします:
この調整係数により広帯域誘電体ミラーBB1-E01のLIDTは0.45 J/cm2に、Nd:YAGレーザーラインミラーのLIDTは1.6 J/cm2になり、これらをビームの最大エネルギ密度0.7 J/cm2と比較します。広帯域ミラーはレーザによって損傷を受ける可能性があり、より特化されたレーザーラインミラーがこのシステムには適していることが分かります。
ナノ秒パルスレーザの例:波長が異なる場合のスケーリング
波長1064 nm、繰返し周波数2.5 Hz、パルスエネルギ100 mJ、パルス幅10 ns、ビーム径(1/e2)16 mmのレーザ光を、NDフィルタで減衰させるようなパルスレーザーシステムを想定します。これらの数値からガウシアン出力における最大エネルギ密度は0.1 J/cm2になります。Ø25 mm、OD 1.0の反射型NDフィルタ NDUV10Aの損傷閾値は355 nm、10 nsのパルスにおいて0.05 J/cm2で、同様の吸収型フィルタ NE10Aの損傷閾値は532 nm、10 nsのパルスにおいて10 J/cm2です。1つ前のタブで説明したように光学素子のLIDTは、ナノ秒パルス領域では波長の平方根にスケーリングします。
スケーリングによりLIDTの調整値は反射型フィルタでは0.08 J/cm2、吸収型フィルタでは14 J/cm2となります。このケースでは吸収型フィルタが光学損傷を防ぐには適した選択肢となります。
マイクロ秒パルスレーザの例
パルス幅1 µs、パルスエネルギ150 µJ、繰返し周波数50 kHzで、結果的にデューティーサイクルが5%になるレーザーシステムについて考えてみます。このシステムはCWとパルスレーザの間の領域にあり、どちらのメカニズムでも光学素子に損傷を招く可能性があります。レーザーシステムの安全な動作のためにはCWとパルス両方のLIDTをレーザーシステムの特性と比較する必要があります。
この比較的長いパルス幅のレーザが、波長980 nm、ビーム径(1/e2)12.7 mmのガウシアンビームであった場合、線形パワー密度は5.9 W/cm、1パルスのエネルギ密度は1.2 x 10-4 J/cm2となります。これをポリマーゼロオーダ1/4波長板WPQ10E-980のLIDTと比較してみます。CW放射に対するLIDTは810 nmで5 W/cm、10 nsパルスのLIDTは810 nmで5 J/cm2です。前述同様、光学素子のCW LIDTはレーザ波長と線形にスケーリングするので、CWの調整値は980 nmで6 W/cmとなります。一方でパルスのLIDTはレーザ波長の平方根とパルス幅の平方根にスケーリングしますので、1 µsパルスの980 nmでの調整値は55 J/cm2です。光学素子のパルスのLIDTはパルスレーザのエネルギ密度よりはるかに大きいので、個々のパルスが波長板を損傷することはありません。しかしレーザの平均線形パワー密度が大きいため、高出力CWビームのように光学素子に熱的損傷を引き起こす可能性があります。
Insights:レトロリフレクタ
こちらのページではコーナーキューブレトロリフレクタ内での光の反射についてご覧いただけます。
- ビームのアライメントはレトロリフレクタを通過するビーム光路にどのような影響を及ぼすか
- レトロリフレクタープリズムの裏面を金属コーティングする理由は
- コーナーキューブへの入射角は出射ビームのパワーに影響を及ぼすか
このほかにも実験・実習や機器に関するヒントをまとめて掲載しています。こちらからご覧ください。
ビームのアライメントはレトロリフレクタを通過するビーム光路にどのような影響を及ぼすか
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図2:ビームが反射されるシークエンスは6通りあります。そのシークエンスは最初にビームが反射される領域によって決まります。上の図は、レトロリフレクタのノーマル軸(本文参照)とほぼ平行な入射ビームに適用されます。矢印はビームの光路、点は反射される位置を示しています。
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図1:図ではコーナーキューブの3つの反射面をそれぞれ色分けして示し、さらにその半分の面を数字で示しています。レトロリフレクタは、入射ビームをそれぞれの面で反射し、入射ビームに平行なビームを出射するように設計されています。
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図 4:最初に反射される位置を赤色の面の斜線より下の位置にシフトすると、次は黄色の面で反射されます。青色の面での3回目の反射の後、ビームは図3の出射ビームと平行に出射しますが、その出射面は変化しています。
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図 3:ビームがレトロリフレクタのノーマル軸に平行に入射し、最初に赤色の面の斜線より上の位置で反射されたときは、次に青色の面で反射されます。その後、ビームは黄色の面で反射され、レトロリフレクタから出射します。
コーナーキューブから出射したビームは、入射ビームに対して平行に、しかし入射ビームとは反対方向に伝搬します。入射ビームはコーナーキューブの頂点、あるいは3面のうちの1つの面上の1点にアライメントすることができます。 入射ビームが頂点にアライメントされているときは、入射ビームと出射ビームは同一線上にあります。入射ビームのスポットが頂点と重ならないときは、2つのビームは分離します。
レトロリフレクタの面の1つにアライメントされた入射ビームは、その面で反射されたのち、レトロリフレクタから出射されるまでに他の2つの面で反射されます。入射角により、ビームが3つの異なる面で反射されるシークエンスは6通りあります。レトロリフレクタ内を通過する光路を選択することは、ビーム位置を最適化し、また偏光に対する影響を最小化するという観点から、非常に有用です。
ビームを特定のシークエンスで反射させたいときには、1つの面に入射するようにビームをアライメントするだけでは不十分です。ビームをその面の適切な半分の面内に入射しなければなりません。
ビーム光路の追跡
レトロリフレクタの頂点を正面から見ると、反射の効果により、3つの面のそれぞれ半分の面に対応する6つの面を見ることができます。ここで、それらの面は斜めの点線で分離して識別されています(図1)。さらに、見やすくするために、レトロリフレクタの3つの面をそれぞれ色分けして示しています。ノーマル軸は図に示されていませんが、頂点を通り、3つのすべての面から等距離にあります。
6通りある反射のシークエンスは、入射角によって異なります。図2はノーマル軸にほぼ平行に入射するビームに対して適用されます。これらの図では中空レトロリフレクタが使用されていますが、反射のシークエンスはプリズムミラーにも当てはまります。
最初に反射された位置により、ビームがレトロリフレクタ内で反射されるシークエンスが決まります。ビームは常に入射面とは異なる面から出射します。
例
図3と4は、入射ビームが最初に左端の垂直な面で反射された時に生じる、2通りの反射の様子を示しています。入射ビームはレトロリフレクタのノーマル軸に平行です。
図3のように、入射ビームが最初に斜線より上の位置で反射されたときは、最後の反射面は水平な面(黄色)になります。一方、入射ビームが最初に斜線より下の位置で反射されたときは、最後の反射面はもう一つの垂直な面(青色)になります。この2つのケースで、出射するビームは互いに平行ですが、その位置は異なっています。
最終更新日:2020年7月8日
レトロリフレクタープリズムの裏面を金属コーティングする理由は
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図6:垂直偏光ビームを内部全反射型のレトロリフレクタープリズム(PS975M)と、裏面に金コーティングが施されたレトロリフレクタープリズム(PS975M-M01B)に入射した結果を示しています。各出射ビームの偏光楕円は、ビームが3回目に反射する領域に示されています。水平軸に対する楕円率( χ )と方位角( ψ )グラフはこちらをご覧ください。
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図5:水平偏光のビームを内部全反射型のレトロリフレクタープリズム(PS975M)と、裏面に金コーティングが施されたレトロリフレクタープリズム(PS975M-M01B)に入射した結果を示しています。各出射ビームの偏光楕円は、ビームが3回目に反射する領域に示されています。水平軸に対する( χ )と方位角( ψ )グラフはこちらをご覧ください。
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図8:レトロリフレクタは入射光の一部を、入射光の偏光とは直交する偏光に変換します。裏面が金コーティングされたレトロリフレクタープリズム(PS975M-M01B)から出射する光の90%以上は、入射時の偏光状態を維持していました。内部全反射型のレトロリフレクタープリズム(PS975M)の場合、その割合は光路に大きく依存し、80%を超えることはありませんでした。
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図7:レトロリフレクタは、入射ビームが各面で1回反射されるように設計されています。ビームが図5および6の面(紙面)に対してほぼ垂直に入射したとき、ビームは6通りの光路のうちの1つをたどります。
レトロリフレクタープリズムの裏面に金属コーティングが施されていると、出射ビームにおける偏光の変化が大幅に抑えられます。
これは、鏡面反射と内部全反射の違いによるものです。鏡面反射はガラスとガラスよりも屈折率の大きな金属の界面で生じ、内部全反射(TIR)が生じるには裏面側に空気のような屈折率の小さな物質が必要です。
ガラスと金属の界面において発生する鏡面反射では、内部全反射に比べて入射ビームの偏光楕円率が良く保存されます。
偏光と光路
レトロリフレクタを通る光路は、3つの反射面をさらに6つのクサビ形に分割することで表現することができます(図5、6、7)。実線は反射面が物理的に接触する線を示します。点線は各反射面を半分に分ける境界を示しています。
これらの図のレトロリフレクタの各反射面は、紙面に垂直な軸に対してそれぞれが同等に対面するように向かい合っています。図7は、入射ビームが図の面(紙面)に対して垂直な場合について、ビームが入射してから出射するまでの反射の順序を示しています。
出射光の偏光状態
内部全反射型のレトロリフレクタープリズム(PS975M)と裏面が金コーティング付きのレトロリフレクタープリズム(
図5と6の出射ビームの偏光状態は、偏光楕円を用いて表されています。それぞれの出射ビームの偏光楕円は、3回目に反射される領域内に示されています。
出射ビームは入射ビームと同じ偏光状態を持つことが理想的です。しかしこれらの測定結果は、レトロリフレクタが入射光の一部を、入射光の偏光とは直交する偏光に変換していることを示しています。図8のグラフは、出射ビーム中における、入射光の偏光方向と平行な偏光成分の割合の測定値です。
裏面に金コーティングが施されたレトロリフレクタープリズムでは、入射した直線偏光の偏光状態が大変よく維持されます。
最終更新日:2020年7月7日
コーナーキューブへの入射角は出射ビームのパワーに影響を及ぼすか
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図10:ガラスと空気の屈折率は異なるため、ビームは前面で反射します。反射された光は出射するまでにレトロリフレクタ内を複数回通過する場合があります。重ねられたコヒーレント光により干渉が生じます。
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図9:コーナーキューブレトロリフレクタを通過するビームは後方の3つの面で反射され、その順序はビームの入射位置によって決定されます。上図に示す入射ビームの入射角は0°で、頂点から外れています。
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図12:出射光パワーの入射角依存性の、コーナーキューブレトロリフレクタの種類による差異。図11と同じ方法で測定したデータを、同様に同じスケールで規格化し、見やすいように各グラフを垂直方向にシフトして示しています。前面にARコーティングが施されているリフレクタ
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図11:内部全反射レトロリフレクタープリズム(PS975M)の出射光パワーの入射角依存性(測定値)。入射ビームの光源は1064 nmレーザ光源DBR1064Sで、そのコヒーレンス長は数メートルです。 最大の振幅は入射角0°付近にみられ、ここでは1st Passと3rd Passの出射光は重なっていました。1/e2ビーム径は、レトロリフレクタの前面から30 cmの位置で、±1°より大きい入射角では重なりませんでした。
レトロリフレクタープリズムからの出射光のパワーは、入射角(AOI)が変化すると平均値のまわりで振動する場合があります。これは、多重反射干渉によるもので、光源のコヒーレント長がレトロリフレクタ内の光路長の2倍以上あるときに生じることがあります。
レトロリフレクタの前面に反射防止コーティングが施されていると、この変動はすべての入射角において大幅に小さくなります。金属コーティングされた中空レトロリフレクタの出射ビームパワーは、入射角にほぼ依存しません。
光路
これらのコーナーキューブレトロリフレクタでは、入射ビームに対して平行で、かつ反対方向に伝搬するビームが出射されます。図9では1つの
入射角は、レトロリフレクタの前面に垂直な軸を基準にしています。この軸は頂点を通り、また3つの反射面から等距離にあります。
前面での反射
図10に示すように、光はレトロリフレクタの表面と周囲の物質の境界面において反射するかあるいは透過するかによって、レトロリフレクタ内を複数回通過する場合があります。
ガラス製のレトロリフレクタが空気に囲まれているとき、入射光の約96%はレトロリフレクタ内を1回通過して最初に出射する主たるビームとなり、約0.16%はレトロリフレクタ内をもう1巡してから出射します。さらに巡回する光の強度は、ここでは無視できます。
干渉の条件
レトロリフレクタープリズムの出射光は異なる光路長を伝播するビームから構成されているため、次の条件のときに干渉が生じます。
- ビームが重なっている。これは入射ビームの入射角が0°に近く、出射光の測定位置がレトロリフレクタに近い場合により生じやすい条件です。より離れた位置で測定した場合、レトロリフレクタの仕様に基づくビームのずれと入射角の影響により、1st Passと3rd Passの出射光はより大きく分離します。
- 光源のコヒーレント長が、1st Passの光路長とそれに重なる3rd Passの光路長との差よりも長い。
コーナーキューブレトロリフレクタの比較
T小さい入射角での出射光パワーの変化を、次の4種類のコーナーキューブレトロリフレクタで比較しました (内部全反射レトロリフレクタープリズムPS975M、裏面に金コーティング付きのレトロリフレクタープリズム
図11は内部全反射レトロリフレクタープリズムの測定値で、グラフは規格化されています。入射角が大きくなると、1st Passと3rd Passの出射ビームは互いに離れていきました。入射角が約±1°より大きくなると、ビームの1/e2径は重ならなくなりました。これにより振幅は入射角の増加とともに小さくなりました。ディテクタの位置をレトロリフレクタの前面に近付けると、振動が著しい入射角の範囲は大きくなります。
図12では、図11のグラフにほかの3種類のレトロリフレクタの測定データを加えています。同じスケールに規格化していますが、見やすいよう垂直方向にシフトさせています。この結果から、前面にARコーティングを施すと、レトロリフレクタープリズムからの出射光におけるパワー変動の振幅を抑えられることが分かります。中空レトロリフレクタの出射光パワーが変動しないのは、前面に物質の境界面が無いためです。
最終更新日:2020年7月7日
プリズムのセレクションガイド
当社では、光の反射、反転、回転、分散、偏向、コリメートなどのために、様々なプリズムをご用意しています。下記に掲載されていないプリズムのタイプや基板などについては、当社までお問い合わせください。
ビームステアリング用プリズム
プリズム | 材質 | 偏向 | 反転 | 逆転または 回転 | 図解 | 用途 |
---|---|---|---|---|---|---|
直角プリズム | N-BK7, UV溶融石英(UVFS), フッ化カルシウム(CaF2), セレン化亜鉛(ZnSe) | 90° | 90° | No | 90°リフレクタで、望遠鏡やペリスコープなどの光学システムに使用可能 | |
180° | 180° | No | 180°リフレクタで、入射光角に無依存。 非反転ミラーで、双眼鏡で使用可能。 | |||
内部全反射型 レトロリフレクタ (マウント無し、 マウント付き) 鏡面反射型 レトロリフレクタ (マウント無し、 マウント付き) | N-BK7 | 180° | 180° | No | 180°リフレクタで、入射光角に無依存。 ビームアライメントやビームデリバリで使用。向きの制御が難しい状況でミラーの代替品として使用可能 | |
マウント無し ペンタプリズム および マウント付き ペンタプリズム | N-BK7 | 90° | No | No | 90°リフレクタで、ビームプロファイルの逆転や反転無し。 アライメントや光調整に使用可能。 | |
ルーフプリズム | N-BK7 | 90° | 90° | 180o 回転 | 90°リフレクタで、像を反転し回転(像が左右上下反対になります)。 アライメントや光調整に使用可能。 | |
マウント無し ダブプリズム および マウント付き ダブプリズム | N-BK7 | No | 180° | 2回のプリズム回転 | ダブプリズムは、光の入射面によって像を反転、逆転または回転します。 ビーム回転子の回転方向を決定 | |
180° | 180° | No | 非逆転ミラーとして機能するプリズム 光学系におけるレトロリフレクタや直角(180°偏向)プリズムと同じ特性。 | |||
ウェッジプリズム | N-BK7 | 2°~10°のモデル | No | No | ビームステアリング用途。 1つのウェッジプリズムを回転するとき、光線を偏向角の2倍の角度で円に沿って動かすことが可能。 | |
No | No | 可変ビームステアリングへの応用。 両方のウェッジを回転した時、光線を、偏向角の4倍の角度で円弧状に動かすことが可能。 | ||||
プリズムカプラ | ルチル(TiO2) またはGGG | 可変a | No | No | 光をフィルムに向けて結合するために屈折率の高い基材を使用。 ルチルは nfilm > 1.8に使用。 GGGは nfilm < 1.8に使用。 |
分散プリズム
プリズム | 材質 | 偏向 | 反転 | 逆転または 回転 | 図解 | 用途 |
---|---|---|---|---|---|---|
等辺プリズム | F2, N-F2、N-SF11, フッ化カルシウム, セレン化亜鉛(ZnSe) | 可変a | No | No | 分散プリズムは回折格子の代替が可能。 白色光を可視領域に分岐するために使用。 | |
分散補償 プリズムペア | UV溶融石英, フッ化カルシウム(CaF2), SF10, N-SF14 | 可変式垂直オフセット | No | No | 超短パルスレーザーシステムにおけるパルス広がりの補償。 分散補償や波長調整用の光学フィルタとして使用可能。 | |
ペロン・ブロカ プリズム | N-BK7, UV溶融石英, フッ化カルシウム | 90° | 90° | No | 光線の波長分離に使用。90°の位置で出射。 レーザ高調波の分離、群速度分散の補償に使用。 |
ビーム操作用プリズム
プリズム | 材質 | 偏向 | 反転 | 逆転または 回転 | 図解 | 用途 |
---|---|---|---|---|---|---|
アナモルフィック プリズムペア | N-KZFS8, N-SF11 | 可変式垂直オフセット | No | No | 単軸に沿った可変倍率。 楕円形ビームのコリメートに使用(例:半導体レーザ)。 入射ビームを単軸に縮小・拡大して、楕円形ビームを円形ビームに変換。 | |
円錐(アキシコン)レンズ(UVFS, ZnSe) | UV溶融石英(UVFS)またはセレン化亜鉛(ZnSe) | 可変a | No | No | コリメート光源からベッセル型の強度プロファイルの円錐状の非発散ビームを生成。 |
偏光状態変更用プリズム(偏光子)
プリズム | 材質 | 偏向 | 反転 | 逆転または 回転 | 図解 | 用途 |
---|---|---|---|---|---|---|
グランテーラ、 グランレーザ、α-BBO グランレーザ偏光子 | グランテーラ: 方解石 グランレーザ: α-BBO, 方解石 | p 偏光 - 0° s 偏光 - 112°a | No | No | プリズムを2個使った構成と複屈折方解石を使用し、非常に消光比の高い直線偏光を生成。 プリズムの境目でs偏光が完全に内部反射されるのに対し、p偏光は透過。 | |
ルチル偏光子 | ルチル(TiO2) | s偏光 - 0° p偏光は筐体によって吸収 | No | No | プリズムを2個使った構成と複屈折ルチル(TiO2)を使用し、非常に消光比の高い直線偏光を生成。 プリズムの境目でp偏光が完全に内部反射されるのに対し、s偏光は透過。
| |
ダブルグランテーラ偏光子 | 方解石 | p偏光 - 0° s偏光は筐体によって吸収 | No | No | プリズムを3個使った構成の複屈折方解石を使用し、大きな見込み角で最大の偏光効率を得る。 プリズムの境目でs偏光が完全に内部反射されるのに対し、p偏光は透過。 | |
グラントムソン 偏光子 | 方解石 | p偏光 - 0° s偏光は筐体によって吸収 | No | No | プリズムを2個使った構成の複屈折方解石を使用し、高い消光比を維持しながら最大視野を実現。 プリズムの境目でs偏光が完全に内部反射されるのに対し、p偏光は透過。 | |
ウォラストンプリズム、ウォラストン偏光子 | 石英, フッ化マグネシウム, α-BBO, 方解石, YVO4 | 対称形のp偏光および s偏光の偏角 | No | No | プリズムを2個使った構成の複屈折方解石を使用し、ビーム移動偏光子で最大の偏角を実現。 s偏光とp偏光は、プリズムから対称方向に偏位。ウォラストンプリズムは分光計や偏光アナライザで使用。 | |
ロションプリズム | フッ化マグネシウム , YVO4 | 常光: 0° 異常光:偏角方向 | No | No | プリズムを2個使った構成でMgF2またはYVO4が小さい偏角で高い消光比をもたらします。 異常光は入力光と同じ光軸を伝搬しますが、常光は偏光しません。 | |
ビーム分離 プリズム | 方解石 | 2.7または4.0 mmのビーム移動 | No | No | プリズムを1個使った構成の複屈折方解石を使用し、入射ビームを2本の直交する偏光ビームに分岐。 s偏光とp偏光は2.7または4.0 mmで分離。ビーム分離プリズムは、90°分割ができない場合に偏光ビームスプリッタとして使用可能。 | |
フレネル・ロム リターダ | N-BK7 | 直線偏光から円偏光へ 垂直オフセット | No | No | λ/4フレネル・ロムリターダは、直線偏光入力を円偏光出力に変換。 複屈折波長板と比較して、幅広い波長でなλ/4リターダンス。 | |
直線偏光を90°回転 | No | No | λ/2フレネル・ロムリターダは、直線偏光を90°回転。 複屈折波長板と比較して、幅広い波長で均一なλ/2リターダンス。 |
ビームスプリッタープリズム
プリズム | 材質 | 偏向 | 反転 | 逆転または 回転 | 図解 | 用途 |
---|---|---|---|---|---|---|
ビームスプリッターキューブ | N-BK7 | 分岐比50:50、0°と 90° sおよびp偏光が互いに10%以内 | No | No | プリズムを2個使った構成と、誘電体コーテイングにより、ほぼ偏光無依存で分岐比は50:50。 仕様波長範囲内では、偏光無依存型のビームスプリッタとして機能。 | |
偏光ビームスプリッターキューブ | N-BK7, UV溶融石英, N-SF1 | p偏光 - 0° s偏光 - 90° | No | No | プリズムを2個使った構成と、誘電体コーテイングにより、p偏光を透過し、s偏光を反射。 高度に偏光する際には、透過光を利用。 |
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