プリズムレトロリフレクターからの出射光パワーの光干渉による入射角依存性


プリズムレトロリフレクターからの出射光パワーの光干渉による入射角依存性


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コーナーキューブへの入射角は出射ビームのパワーに影響を及ぼすか

 

Reflections cause multiple beam interference at the output of a retroreflector.
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図2:ガラスと空気の屈折率は異なるため、ビームは前面で反射します。反射された光は出射するまでにレトロリフレクタ内を複数回通過する場合があります。重ねられたコヒーレント光により干渉が生じます。

The primary beam path through a solid prism retroreflector.
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図1:コーナーキューブレトロリフレクタを通過するビームは後方の3つの面で反射され、その順序はビームの入射位置によって決定されます。上図に示す入射ビームの入射角は0°で、頂点から外れています。

レトロリフレクタープリズムからの出射光のパワーは、入射角(AOI)が変化すると平均値のまわりで振動する場合があります。これは、多重反射干渉によるもので、光源のコヒーレント長がレトロリフレクタ内の光路長の2倍以上あるときに生じることがあります。

レトロリフレクタの前面に反射防止コーティングが施されていると、この変動はすべての入射角において大幅に小さくなります。金属コーティングされた中空レトロリフレクタの出射ビームパワーは、入射角にほぼ依存しません。

光路
これらのコーナーキューブレトロリフレクタでは、入射ビームに対して平行で、かつ反対方向に伝搬するビームが出射されます。図1では1つのビーム路を示しています。

入射角は、レトロリフレクタの前面に垂直な軸を基準にしています。この軸は頂点を通り、また3つの反射面から等距離にあります。

前面での反射
図2に示すように、光はレトロリフレクタの表面と周囲の物質の境界面において反射するかあるいは透過するかによって、レトロリフレクタ内を複数回通過する場合があります。

ガラス製のレトロリフレクタが空気に囲まれているとき、入射光の約96%はレトロリフレクタ内を1回通過(図2の1st Pass)して最初に出射する主たるビームとなり、約0.16%はレトロリフレクタ内をもう1巡(図2の3rd Pass)してから出射します。さらに巡回する光の強度は、ここでは無視できます。

干渉の条件
レトロリフレクタープリズムの出射光は異なる光路長を伝播するビームから構成されているため、次の条件のときに干渉が生じます。

  • ビームが重なっている。これは入射ビームの入射角が0°に近く、出射光の測定位置がレトロリフレクタに近い場合により生じやすい条件です。より離れた位置で測定した場合、レトロリフレクタの仕様に基づくビームのずれと入射角の影響により、1st Passと3rd Passの出射光はより大きく分離します。
  • 光源のコヒーレント長が、1st Passの光路長とそれに重なる3rd Passの光路長との差よりも長い。
Oscillations of the power output by solid prism retroreflectors with uncoated and AR-coated front faces as well as a hollow retroreflector, all as a function of small AOI.
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図4:出射光パワーの入射角依存性の、コーナーキューブレトロリフレクタの種類による差異。図3と同じ方法で測定したデータを、同様に同じスケールで規格化し、見やすいように各グラフを垂直方向にシフトして示しています。前面にARコーティングが施されているリフレクタ(PS975-C)では、振幅が大幅に抑えられています。中空レトロリフレクタ(HRR201-M01)では干渉が観察されませんでした。

Oscillations of the power output by a solid prism retroreflector, as a function of small AOI.
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図3:内部全反射レトロリフレクタープリズム(PS975M)の出射光パワーの入射角依存性(測定値)。入射ビームの光源は1064 nmレーザ光源DBR1064Sで、そのコヒーレンス長は数メートルです。 最大の振幅は入射角0°付近にみられ、ここでは1st Passと3rd Passの出射光は重なっていました。1/e2ビーム径は、レトロリフレクタの前面から30 cmの位置で、±1°より大きい入射角では重なりませんでした。

コーナーキューブレトロリフレクタの比較
小さい入射角での出射光パワーの変化を、次の4種類のコーナーキューブレトロリフレクタで比較しました(内部全反射レトロリフレクタープリズムPS975M、裏面に金コーティング付きのレトロリフレクタープリズムPS975M-M01B、前面にARコーティング付きの内部全反射レトロリフレクタープリズムPS975M-C、中空レトロリフレクタHRR201-M01)。光源にはコヒーレンス長が数メートルの1064 nm半導体レーザDBR1064Sを使用し、パワーディテクタはレトロリフレクタの前面から30 cmの位置に配置しました。1面につき1回の反射となるように十分小さなビームサイズに設定しました。

図3は内部全反射レトロリフレクタープリズムの測定値で、グラフは規格化されています。入射角が大きくなると、1st Passと3rd Passの出射ビームは互いに離れていきました。入射角が約±1°より大きくなると、ビームの1/e2径は重ならなくなりました。これにより振幅は入射角の増加とともに小さくなりました。ディテクタの位置をレトロリフレクタの前面に近付けると、振動が著しい入射角の範囲は大きくなります。

図4では、図3のグラフにほかの3種類のレトロリフレクタの測定データを加えています。同じスケールに規格化していますが、見やすいよう垂直方向にシフトさせています。この結果から、前面にARコーティングを施すと、レトロリフレクタープリズムからの出射光におけるパワー変動の振幅を抑えられることが分かります。中空レトロリフレクタの出射光パワーが変動しないのは、前面に物質の境界面が無いためです。

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最終更新日:2020年7月7日


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