偏波保持ファイバーへの温度の影響


偏波保持ファイバーへの温度の影響


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ストレスロッド(応力付与ロッド)タイプの偏波保持ファイバの温度依存性

Diagram of PANDA stress-birefringent PM fiber showing stress rods (SAP).
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図1:パンダ型の偏波保持ファイバにはクラッドにストレスロッド(応力付与ロッド)が存在します。これらの円筒径のロッドは、コアに対して平行に配置されています。ファイバの温度が加工時の温度より下がるにつれ、ストレスロッドのガラスは周りのクラッドよりも収縮するため、コアがスロー軸に沿って引っ張られます。

Source of 
Change in Delay
Change in ParameterResulting
Change in Delay
BirefringenceLength
Temperature-Dependent
Birefringence

 

---

 

Temperature-Dependent
Fiber Length
---
Change in delay between orthogonal polarization components in a PM fiber when considering only the temperature-dependent length expansion due to CTE.
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図3:図2では、複屈折性の温度による変化のみが大きな影響があったため、図2の赤線のみをここに示しています。これらの値は、温度の変化によってファイバ長が増加し、ファイバの複屈折性が一定であることを仮定して計算されています。

Change in delay between orthogonal polarization components in a stress-birefringent PM fiber when considering the temperature-dependent change in birefringence.
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図2:パンダ型偏波保持ファイバを伝搬する直交の偏光成分の間の相対遅延(y軸)は、ファイバの温度が変化すると変動(x軸)します。温度が上昇すると、偏波保持性能は低下します。性能は温度が下がることで向上します。青線と赤線の数値は、それぞれ複屈折性とファイバ長のみが温度によって変化することを仮定して計算されています。

偏波保持ファイバの直交するスロー軸とファスト軸の間の屈折率の差が大きければ大きいほど、偏波保持性能は良くなります。しかし、温度が上昇するにつれてコアの張力が下がるため、この差(複屈折性)は減少します。ファイバの複屈折性の減少は、温度の上昇にほぼ比例します。

温度依存の複屈折性
パンダファイバやボウタイ型ファイバなどの応力複屈折の偏波保持ファイバは、クラッドにストレスロッド(応力付与ロッド)が存在します(図1)。ストレスロッドのガラスはクラッドのグラスよりも熱膨張係数(CTE)が高いため、加工後すぐにファイバの温度が下がるにつれて、ストレスロッドのガラスは周りのクラッドに比べて収縮速度が速くなります。より収縮するストレスロッドは、周りのクラッドを引っ張り、室温程度ではコアに大きな張力を与えます。これによりファイバのコアでは複屈折性が生じます。

比例定数()において、下記の複屈折性()の式は

,

ガラスの温度差の関係式で、温度差は液状からガラス状に変化するときの温度(To 、仮想温度)と動作温度()との差です。

温度の影響の概算
偏波保持ファイバを伝搬するすべての光が同じファイバ軸に対して平行に偏光する場合、ファイバから出射する光の偏光状態は温度に依存しません。光に2つのファイバ軸に平行な偏光成分が含まれている場合、動作温度の変化により楕円偏光状態が変化します。

これは出射偏光状態を決定する2つの直交成分の間の相対遅延によるものです。遅延はファイバの複屈折性とファイバ長に依存しますが、このどちらも温度に依存性があります。しかし、ファイバの偏波保持性能に大きな影響を与えるのは複屈折性の変化のみです。

これら2つの出射偏光状態への影響は、表の式を使用して求めました。動作波長は1550 nm、ファイバはパンダ型ファイバ(PM980-XP)で長さ2 m(L)、ビート長は約2.7 mmで計算しています。係数は-5.6 x 10-7で仮定しました。[3]また、溶融石英ガラスファイバーのコアも、熱膨張係数5.5 x 10-7/°Cで仮定しました。

計算結果は図2と3のグラフに示しています。遅延(y軸)は温度の変化(x軸)によって変動します。これは、温度に依存する遅延をモニタすることで、温度に依存するファイバの複屈折性と、ファイバが偏光を維持するポテンシャルについての情報が得られることを示しています。

温度とビート長
ファイバの複屈折性が偏波保持ファイバの偏光維持力を決定しますが、複屈折性は通常製造メーカーによって明記されません。ビート長は通常明記されているパラメータです。ビート長(Lp )

は波長()と複屈折性の割合で、性能が高い偏波保持ほど短くなります。なお応力複屈折の偏波保持ファイバでは、ビート長は温度上昇とともに長くなります。

参考文献
[1] Chris Emslie, in Specialty Optical Fibers Handbook, edited by Alexis Mendez and T. F. Morse (Elsevier, Inc., New York, 2007) pp. 243-277.
[2] Malcolm P. Varnham et al., "Analytic Solution for the Birefringence Produced by Thermal Stress in Polarization-Maintaining Optical Fibers," J. Lightwave Technol., LT-1(2), 332-339 (1983).
[3] Zhenyang Ding et al., "Accurate Method for Measuring the Thermal Coefficient of Group Birefringence of Polarization-Maintaining Fibers," Opt. Lett., 36(11), 2173-2175 (2011).
[4] M. Cavillon, P. D. Dragic, and J. Ballato, "Additivity of the coefficient of thermal expansion in silicate optical fibers," Opt. Lett, 42(18), 3650 - 3653 (2017).

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最終更新日:2020年9月16日


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