自作のケプラー式ビームレデューサー(ビームエキスパンダー)の例


自作のケプラー式ビームレデューサー(ビームエキスパンダー)の例


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自作のケプラー式ビームレデューサの例

ビームレデューサは、低パワーの連続発振(CW)レーザとフリースペース型アイソレータとの間に設置するために設計しました。レーザの波長はアイソレータの動作範囲内でしたが、ビーム径はアイソレータの最大仕様を超えていました。ビームレデューサはケプラー式望遠鏡をベースにして設計し、2つの正レンズを用いて組み立てました。

The DIY beam reducer shown in place between the laser and the free-space isolator.
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図1:ケプラー式ビームレデューサは、レーザ光のビーム径を縮小するように製作されており、光アイソレータの入射口および出射口でビーム径がクリッピングされることなく通過する必要があります。

The DIY isolator is shown with its constituent components labeled.
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図2:ビームレデューサでは、正の焦点距離を有する2枚のレンズが、各レンズの焦点距離の和に等しい距離で配置されています。縮小率は、出射側レンズの焦点距離を入射側レンズの焦点距離で除した値に等しくなります。ビームレデューサの構成部品については上の写真をご覧ください。出射ビームの径は、レンズチューブSM1V10の長さを変えながらビーム径を計測することで、適切に調整することができます。

ビーム径の要件
レーザ光源PL201は、波長520 nm、光パワー0.9 mW(典型値)のコリメートされた連続光を出力します。レーザから5 cm離れた距離では、直径3 mmの円内にビームパワーの99%以上が含まれます。

しかし、フリースペース型アイソレータ(IO-3-532-LP)の仕様では、直径2.7 mm以下の円内に100%の入射ビームパワーが含まれることを要求しています。この仕様はビーム径をおよそ2.0 mmまで縮小させることで満たすことができ、それによりアイソレータを通過させるためのビームアライメントが容易になります(図1)。

縮小率とレンズの選択
ビームレデューサは、多くの場合は2枚のレンズを用いたケプラー式またはガリレオ式望遠鏡をベースに設計されます。どちらの方式もこの用途に対しては同様の性能を発揮しますが、ケプラー式の設計では光線追跡のジオメトリを利用してレンズの配置を描画し、さらに出射光のビーム径を表示することが容易なため、ケプラー式による設計を選択しました(図2下)。

ここでは、正の焦点距離を有する、反射防止コーティング付きのØ25.4 mm平凸レンズを選択しました。ビーム径よりも大きな有効径のレンズを選択し、レンズの曲面側をコリメート光側に向け、平面側をビームの焦点側に向けて設置することで、収差を小さく抑えることができます(図2下)。また、Ø25.4 mm(Ø1インチ)光学素子は、Ø25 mm~Ø25.4 mm(Ø1インチ)レンズチューブおよび関連アクセサリに直接取り付けることができます。

縮小率(m)は、目的の出射ビーム径を入射ビーム径で除することで得られます(m = 2.0 mm / 3.0 mm = 0.67)。この縮小率は出射側のレンズの焦点距離を入射側のレンズの焦点距離で除した比にも等しくなります。ここでは、焦点距離35 mm および50 mmのレンズを選択して、縮小率(35 mm / 50 mm)を0.7としました。この係数を使用して、出射ビームパワーの99%が直径2.1 mm(0.7 * 3 mm = 2.1 mm)の円内に含まれると推定しました。

ビームの縮小が広がり角に与える影響
ビームレデューサはビームウェスト径を縮小させますが、そのために広がり角を増加させます。ビームレデューサの出射面近傍でのビーム径は2.1 mmになりますが、ビームが伝搬するに従って回折効果によってビーム径は拡大します。このアプリケーションでは、ビームがクリッピングされずにアイソレータに入るには、約18 cmの自由空間を伝搬した後でのビーム径が2.7 mm未満でなければなりません。

縮小されたビームがアイソレータの入射径の仕様を満たし、クリッピングされずにアイソレータを通過できるかを確認するには、まず次のようにレーザ光のビームウェスト径(2Wo = 2.1 mm)を用いて出射ビームの広がり角(θ )を計算します。

ここで、はレーザ光の波長です。次に、この広がり角を用いてアイソレータの入射面におけるビーム径(D  )を計算すると、

が得られます。次に、この式における距離を大きくして(z = 26.5 cm)、アイソレータの出射面におけるビーム径(D = 2.18 mm)を計算します。これらの計算結果はいずれも2.7 mm未満であり、ビーム径は少し増加しますが、クリッピング無しでアイソレータの入射口および出射口を通過することがわかります。

具体的な構成
理想的なビームレデューサの設計(図2下)では、入射光のビームウェストは、左側のレンズの入射側曲面からその焦点距離(50 mm)だけ離れていると仮定します。その条件下では、光は図のようにレンズの出射側平面から焦点距離だけ分離れた場所で焦点を結びます。この入射条件が満たされない場合は、最初のレンズから出射されるビームは正確に50 mm離れた位置で焦点を結ぶことはなく、またビームレデューサから出射したビームの径は理想的な計算値にはなりません。ビームレデューサから必要な距離にわたって仕様を満たすビーム径を得るには、2枚のレンズ間の距離を理想的な設計値から調整する必要がある場合があります。このアプリケーションでは、この間隔が調整できるように筐体を構成しています。

2枚のレンズの位置を約85 mm離して固定している筐体は、レンズチューブで構成されています(図2)。この図のように、レンズの曲面はコリメート光の方向を向いています。長さ76.2 mm(3インチ)のチューブ部分(固定長)は、長さ25.4 mm(1インチ)のレンズチューブSM1L10と長さ50.8 mm(2インチ)のレンズチューブSM1M20を用いて組み立てています。焦点距離35 mmのレンズはØ25 mm~Ø25.4 mm(Ø1インチ)レンズチューブ内に固定されています。焦点距離50 mmのレンズを保持している調整機能付きレンズチューブSM1V10は、不足している長さを追加し、さらに2枚のレンズ間の距離を最適化する機能を果たします。このアセンブリは、アイソレータのアライメント中はレンズチューブマウントSM1RCで保持されています。

このビームレデューサの使用方法については
こちらの動画ページでご覧ください。

「Insights-ヒント集」は下記リンクからご覧いただけます。  
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最終更新日: 2021年6月18日


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